↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴代領主の平均生存年数三年の追放先を聖都にしてみた  作者: Lemonade
奇跡と騎士と産業革命の始まり
103/109

突破

 ミラの一発を受け、砲台を守るオルビスが横へ傾いた。受け止めた術者の足元で石が砕け、隣の者まで杖を向け直す。


 空いた正面へ、テオヴァルドが入った。


 突き出された槍を左の盾で払う。右手の穂先は止まらず、兵を貫いて背後の列へ叩きつけた。盾の脇を抜けたクレイドが、台座へ駆け戻ろうとした術者を斬った。


 守備兵が二人へ殺到しても、大砲の狙いは変わらなかった。


 こちらを向く砲口に光が満ち、台座が軋む。


 (ここへ来い)


 杖を向けたまま、一歩横へ出た。追ってくる照準の先から、ミラとエレンが外れる。


 正面へ跳ね返せば、台座へ迫る二人を巻き込む。オーレリアンは杖を肩まで引き、逃がす先を空へ定めた。


 砲撃の光が、視界を埋めた。


 受けた瞬間、胸壁が足元から砕けた。オーレリアンは踏みとどまり、杖先のオルビスを斜めに傾けた。押し寄せる力が上空へ逸れ、雲の下で弾ける。


 熱風が谷を渡った。川面が波立ち、敵も味方も一瞬だけ顔を伏せた。


 それでも、槍を持つ少年は止まらなかった。


 残った防御へ穂先が突き入り、光を砕く。クレイドはその背後へ回り、追ってきた兵の戦斧を受けた。押し込まれる前に刃へ力を込め、柄ごと断つ。


 援護へ走った兵は、ミラの射撃に止められた。


 守備兵が散り、前面を覆っていたオルビスが途切れる。


 台座の奥まで、遮るものがなくなった。


「テオ、砦の奥へ倒す」


「フラクタ・グラヴィタス」


 銀光が地面を走り、台座の片側をえぐり取った。


 支えを失った砲身が後ろへ傾いた。残った石柱へ、テオヴァルドが踏み込む。


 槍の一撃が最後の支えを断った。


 大砲は砦の奥へ倒れ、後ろに並んでいた砲を押し潰した。吹き上がった石が胸壁へ降り、ミラの機体を打つ。傾いた砲身をエレンが支え直す間、オーレリアンは二人の前へ落ちる瓦礫を弾いた。


 クレイドは、倒れる砲身の下を抜けていた。


 倒れる砲身を避け、敵が道を空けていた。そこを抜けた剣が杖を断ち、振り返った盾兵にはテオヴァルドの槍が届く。


 土煙の中から、逃げる足音が増えていく。


 下の道では、味方が坂を上がってきていた。追われた歩兵が砦へ駆け込もうとしたが、背後にはもうバスティオンが迫っている。


 砦を捨てた騎兵が街道へ逃れた。


 その横へ、バスティオンが追いついた。


 長柄に乗り手を落とされ、後続は川岸へ馬を向ける。その退路も、砲を連れた一組に塞がれていた。


 大剣を持つ二人の間で、砲が止まった。


 まだ抜けようとした一騎が撃たれると、次の兵は馬を止め、剣を投げ出した。


 追い立てられて砦へ戻った者は、壊れた砲と、その前に立つ五人を見た。


 オーレリアンは、伏せた兵へまだ剣を向けている将校を見つけた。立って戦えと叫んでいた男が、こちらへ刃を向け直す。


 クレイドが間合いへ入り、剣を叩き落とした。


「指揮官か」


 男は答えず、周囲を見た。もう誰も、その号令では立ち上がらなかった。


「部下を立たせても、砲は戻らぬ。まだ続けるか」


 落ちた剣へ手を伸ばしかけ、男はやめた。


「……降伏する」


 テオヴァルドが槍を引いた。オーレリアンも杖を下げ、砦を見上げている味方へ手を上げる。


 最後まで河原に残っていた敵も、その合図のあとで武器を置いた。


 砲声が止むと、水の音が聞こえた。さっきまで、すぐ下を川が流れていることさえ忘れていた。


 石段を上がってきたエッダが、兜を開いた。五人を見つけ、血のついた籠手を持ち上げる。返そうとして、ミラの手が上がらなかった。


「もう、離していいよ」


 オーレリアンが声をかけても、彼女は杖を握ったまま砲を見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。