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歴代領主の平均生存年数三年の追放先を聖都にしてみた  作者: Lemonade
奇跡と騎士と産業革命の始まり
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火の間を

 息を吸うと、喉まで熱かった。


 テオヴァルドの盾を越えた炎が、両側の岩を舐めている。前へ押し出した左腕は揺れない。だが、後ろへ回った熱風に、ミラが咳き込んだ。


 エレンが空へ杖を向けた。足元にオルビスが開き、行き場を失っていた熱が岩場の外へ噴き上がる。


 息を吸える隙間ができた。


 盾の脇から放った衝撃が、炎を使う術者を岩壁へ叩きつけた。光が途切れた場所へ、クレイドが走る。


 待ち受けた兵の剣を受け流し、肩で後ろへ突き飛ばす。巻き込まれた術者が倒れ、残っていた炎も消えた。


 テオヴァルドがその脇を抜けた。


 逃げ場のない敵を槍が押し崩し、狭い道が開く。二人が追おうとした時、後ろから声がかかった。


「二人とも、先へ出すぎないで」


 ミラの声に、走りかけた足が止まる。まだ彼女の機体は岩の狭いところにいた。エレンが横について、砲身をぶつけずに抜けられる方へ導いている。


 オーレリアンは砲の後ろへ残り、頭上を越えていく射撃を逸らしていた。上の砲台は、まだ川岸の味方を狙っている。


 その時、頭上で弩が鳴った。


 前へ出た機体の外板に矢が刺さる。跳ねた欠片がミラの頬を掠めた。機体へ身を寄せた彼女は、狙われた岩棚を見上げた。


 矢をつがえ直す兵の下に、テオヴァルドとクレイドがいた。


「伏せて!」


 叫ぶのと同時に、砲身が上を向いた。クレイドが隣の肩を引き、二人は岩へ身を伏せる。


 砲声が狭い道を満たした。


 棚が兵ごと砕け、石が頭上へ落ちてきた。オーレリアンは砲撃を逸らしていた杖を引き戻し、落下する塊を谷の外へ弾いた。テオヴァルドも盾をかざしたまま、ミラの方へ戻ってきた。


「大丈夫です。先へ行ってください」


 頬から顎へ血が伝っている。近寄りかけると、彼女は首を振った。


「今は、上をお願いします」


 岩場の入口までは、バスティオンも登ってきていた。その前へ上から光が落ち、岩壁が砕ける。


 先に砲を止める。そう決めても、彼女の頬から目を離すのには少しかかった。


「後で、ちゃんと見せて」


 返事を待たずに石段を上がった。残った敵を槍と剣が押し退け、砲台の横へ出る。


 ようやく、道を撃っていた砲が見えた。


 石の台座に、ミラの機体より大きな砲身が据えてあった。周囲の砲を含めて術者が守り、下からの射撃を弾いている。


 ここまで登れば、川岸の陣も一望できた。


 敵の歩兵は砦の下まで押し戻されていた。だが、その頭上を越えて光が落ちるたび、味方は操縦者を庇って止まる。


 台座を斜面へ崩せば、その兵たちまで潰す。砦の内側へ倒したいが、手前の防御が邪魔だった。


 (こっちへ向けさせるか)


 胸壁の上へ姿を見せ、オーレリアンは砲を支える台座へ光を撃ち込んだ。防御のオルビスが傾き、砲身がゆっくりこちらへ回る。


 眼下で射撃が止んだ。その隙に味方の砲が前へ出て、バスティオンの間を抜いて撃った。押さえられていた兵たちが、一斉に坂を駆け上がる。


「テオ、左へ。私から離れて」


 テオヴァルドとクレイドが左へ走った。ミラの砲は、まだ道の端で止まっている。


 その横で、エレンが右手の崩れた足場を確かめていた。


「右から撃てます」


 そこなら、正面を守る術者の横を狙える。


「そこでは、砲の重さに耐えられません」


 ミラの心配に、隊長は杖を向けて答えた。


「足場は私が支えます。ここで止めて、狙ってください」


 沈みかけた脚をエレンのフォルマが支え、機体の傾きが止まる。ミラは砲身を持ち上げ、隣へうなずいた。


 オーレリアンは、その砲口から敵までの間に誰もいないことを確かめた。


 大砲はこちらを狙い続けている。正面の術者たちも、杖先の光から目を離さない。


「いいよ」


 横からの砲火が、敵の防御を叩いた。


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