きみを奪ってあげる
翌日。
休日明けの平日の朝。
私は学園に向かう通学路を歩きながら登校していた。
学園に通う貴族たちは皆それぞれ屋敷や寮から馬車で通う者もいるが、私はいつも徒歩。
寮から学園まで徒歩で十分程度の距離。
学園までの通学路の距離には門番や衛兵などの見回りも巡回しているため早々貴族に害に害をなす者は現れない。
「こうしていると平和だな…」
昨日、一昨日の休日の出来事がまるで夢だったかのようだ。
まさか立て続けにイベント発生らしからぬ、二人の王子様に迫られるとは思いもしなかった。
これはもしかして小説の力が働いているのだろうか…。
いや、そんなはずはない。
小説とこの世界は所々違っているし、何より悲劇のヒロインの性別が違う。
それはこの世界が小説とは違うことを物語っていることが何より大きい。
「難しい顔して何を考えてるの?」
「ちょっと色々…ってアマリア!いつの間に!?」
「おはよう。歩いていたらハルカが見えたから、すぐに来ちゃった!」
驚く私にアマリアは私の顔を覗き込むように可愛く言った。
(うっ…今日も可愛い…!!)
制服姿のアマリアの可愛さは今日も健在だ。
さすがは誰もが魅了してしまう人魚の姫。
「最近、暑くなってきたけど朝はちょっと風がひんやりするよね」
「ええ。朝と昼の寒暖差が激しいから体調ぐさないようにしないと」
(良かった…。いつも通りだ)
私は内心ほっと安堵する。
いつもと変わらない彼の横顔は一昨日デートした男性の面影が消えていた。
それに対して私は少しだけ残念な気持ちに陥りながらめ、慌てて自分の中で否定した。
(どうして、こんな気持ちになるのよ…。私はアマリアのことを友達だと思っているはずなのに…)
自分で自分の気持ちが分からない私はこの気持ちを今だけは誤魔化すことにした。
彼らの気持ちに対して真剣に考えると決めたばかりなのに。
「ねぇ、ハルカ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
「もちろん。なに?」
笑顔で話し掛けるアマリアに対して私は笑って答えた。
「昨日、ユーリ様と夜会に参加したって噂は本当?」
ピキッ。
アマリアの言葉に私は固まってしまった。
どうしてバレてしまったのだろうか!
昨日の今日なのに!
(そうだ!昨日の夜会には何人か顔見知りの貴族達がいた。それにルピナス嬢も…)
おそらくだが彼女達が噂をし、巡り巡ってアミリアの耳に届いたかもしれない。
ルピナス嬢はともかく、彼女の取り巻きの何人かは私と同じ寮から通っている。
そのせいかもしれない。
「私だってハルカのドレス姿見たかったし、エスコートもしたかった…」
「で、でもユーリ様とは婚約同士で夜会に出席しなければ行けなかったから、それに半分は挨拶回りが殆どよ」
不機嫌な顔で言うアマリアに私は宥めるように彼に言う。
「じゃあさ」
アマリアは私の腕を掴み、自分の方へと引き寄せると私の目を見て挑戦的な笑みを浮かべた。
「私がいますぐにハルカの婚約者になる」
それは思わず魅了される程の瞳と甘い囁きを告げるように彼は唇を動かす。
「ユーリ様から奪って」
ゆっくりと彼は私に顔を近づける。




