きみを愛した理由 2
確かに幼い頃のハルカは我儘だったけれど、教養は優れており、決して理不尽なことを口にはしなかった。
今は落ち着き、我儘さはなりを潜めて周囲の者たちへの気遣い、本来の明るくて食べることが好きな彼女になっている。
ユーリにとって、幼い我儘だったハルカも今のハルカ自身も何も変わらず愛していた。
だからこそ彼女を自分の妻にすることを信じて疑わなかった。
生涯の伴侶として重いほどに愛してしまっていたから。
「ハルカが魅力的なことは知っていたけど、まさか人魚の国の王子からも気にいられてしまうとはね…」
ユーリは思わず溜息をつく。
彼女は成長するに連れて美しくなっていた。
悪い虫がつかないように影で他の男性に牽制し、彼女に極力男性を近づけさせないようにもした。
そのかいもあって、ハルカに近づく者はいなかった。
だがアマリアだけは論外だった。
最初はユーリの顔に惹かれてユーリに好意を持っていたようだが、彼は敢えてそのままにしておいた。
アマリア自身に興味は無かったし、そもそも彼は男性。
最初の時点で気づいたユーリは自分に近づいて来るアマリアに対して親切に接した。
ハルカに近づかないように。
自分に興味があるのなら、自分に彼を惹き付けさせておけばいい。
彼女に興味を持たれては困る。
そう思っていたが、ハルカは彼に近づいた。
同性だと勘違いして。
ユーリは何とかしてハルカをアマリアから遠ざけようとしたが、逆に彼女は自分とアマリアがお似合いだと言い出し、さらにアマリアはハルカの魅力に気づいてしまった。
厄介なことになった。
このまま順風満帆に結婚までいきたかったのに、それが難航を極めるとは……。
王族の決定は覆らない。
だが例外はある。
その例外だけは覆らせるわにはいかない。
自分がハルカに執着している自覚はある。
だが困ったことに手放せそうにない。
恋心とは厄介なものだ。
自分の思う通りに感情なんてコントロールできないのだから…
「取り敢えず今は彼女との仲を深めることが先決かな」
彼女との関係を今よりも、もっと深めておかなければならない。
離れられない程に。
そう思い、ユーリは静かにその場から歩き出したのだった。
****
「疲れたぁ~~」
自室に戻ってネグリジェに着替えた私は一人、ベッドの上に突っ伏した。
(昨日と今日で色々あったな…)
そう思いながら私はベッドの天井を見上げながら考える。
昨日はアマリアから迫られ、今日はユーリ様からプロポーズ紛いなことをされた。
普通なら喜ぶべきシチュエーションだが、問題は自国の王子と隣国の王子二人に迫られていることだ。
私の目標は実家に迷惑を掛けず、普通に結婚して平和に余生を過ごすこと。
だが、このままではそれは叶いそうにない。
だけど二人は本気で私に想いを伝えてくれている。確かに小説の物語の強制力が働いてしまえば、私はユーリ様と結婚してしまう。
たとえそれが運命だとしても、彼らの想いに向き合わない理由にはならない。
運命はまだわからない。
だけど
「よしっ!」
私はベッドから身を起こして意気込んだ。
彼らに真剣に向き合おう。
逃げるのではなくて。
そのうえでこの先私がどうしたいのか決めたら良い。
私はそう思い、決意したのだった。




