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きみを愛した理由

「僕はきみのことを本気で愛してるよ。きみに救われたからだけじゃない。僕がきみを幸せにしたいんだ」


愛しそうに甘く囁くような言葉。

誰もがその言葉を耳にすれば彼に落ちるだろう。


「今のきみが僕のことをただの婚約者としか見てないことぐらい理解できているよ。だけど僕はきみのことを諦めない。きみに心から愛されたいからきみを落とすよ。だから覚悟して欲しい」


「私は…」


彼がここまで私を想ってくれていたなんて知らなかった。

最初の頃は人魚の姫のアマリアと結ばれた方がユーリ様は幸せになれるのではないかと感じていた。

悪女よりも王子様の隣には可愛いヒロインの傍が似合うと。

だけど彼はハルカを求めているのだ。


彼が本気で好きなのはハルカなのか、それとも真理の私なのか分からない。

だからこそ今の私にはまだ答えが出せそうにもなかった。


「あ、そうそう…」

ユーリ様は思い出したかのように呟き、私に満面の笑みを浮かべた。


「絶対に何があってもきみと婚約破棄しないからね」


ゔっ……。

私の考えが読まれている…。


ユーリ様は笑顔のまま一歩私に近づき、迫る。

「この前、姉上と王宮でお茶会してきたらしいですが、姉上に僕との婚約破棄を手伝わせるのは無理ですからね」


「そ、そんなことするわけないじゃないですか!」


私は慌てて彼に誤魔化す。

私の行動が読まれている!


「でも、どうして私がアイビー様とお茶会したことを知っているのですか?」

「この前、用事で王宮に戻った際に侍女から聞いたのです。ですから…」


ユーリ様はずいっと私に顔を近づけた。

「姉上もあなたのことを気に入って、未来の妹のあなたが可愛くって仕方ながないみたいです。私からあなたとの時間を奪うくらいには。今は卒業まで待っていますが、卒業したらすぐに結婚しましょうね。ハルカ」


本気で迫るユーリ様に私は誤魔化しながら、

「か、考えときますわ…」

そういうしかなかったのだった。


****


夜会が終わって、馬車でハルカを学園の寮まで送っていったあと。

ユーリもまた学園の男子寮にある自室に戻ろうとしていた。

夜遅い為、寮の廊下は誰一人としていない。

歩いているのはユーリだだ一人。


本来ならば王子である彼は従者を付けなければならない。

夜会に参加する際、ユーリの従者であるレオンも同行をしようとしていたが、ユーリはレオンに対して断りをいれていた。


婚約者であるハルカとの仲を周囲の貴族達に見せつける場でもあり、それに彼女との大切な時間を誰にも邪魔をされたくはなかった。

王族は常に従者や護衛がついているが、ユーリ自身剣術、護身術を心得ている。

並の騎士の実力ならばいざ知らず、騎士団の団長には敵わないが副団長クラスの実力は兼ね備えている。

自分の身は自分で護れるし、彼女のことも護ってみせる。


今日はアクシデントもあったが、それなりにハルカとの距離を縮めることが出来たはずだ。

ハルカと初めて出会った日からユーリの人生は変わった。

王族として民を護るのは変わらないし、次期国王として国の為に尽くしたいという気持ちは昔から変わらない。

だけど責任ある立場は時に苦しさが生じる。

周囲の目が気になることもある。


そんな中、ハルカだけは違っていた。

彼女は王子としてではなく、ユーリ自信を見てくれていつも隣りで励ましてくれた。

完璧な王子でなくとも良い。

誰でも完璧な人間なんていない、欠点がある方が人間らしくて自分は好きなのだと、そう言いながら。

その言葉でユーリはどれだけ救われてきたのだろうか。


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