気になる人
近づいて来る。
彼の顔が私の方に。
「えっ、ええっと、こんなところで駄目!」
気恥しさのあまりにアマリアの身体を押しのけようとした途端、突然私は後ろから抱き寄せられる体制になってしまう。
「僕の許可なく、勝手に婚約者に触れないでもらえないかな」
後ろを振り向くとそこにはユーリ様がいた。
「ユーリ様!」
「やぁ、ハルカおはよう。昨日ぶりだね」
爽やかな笑顔を浮かべるユーリ様。
私は彼の顔を見て思わず気恥しさを感じてしまう。
脳裏に思い出したのは昨夜の夜会の時の彼からの告白。
本気の告白をされて意識しないほど私は鈍感じゃない。
意識しないようにするが、私の思いとうらはらに彼を意識してしまう。
「どうしたんだい?顔が赤いよ」
後ろから抱きしめたまま私の顔を覗き込んで来るユーリ様。
(駄目!もう限界!!)
キャパオーバーをしてしまった私は彼の腕から逃れると急いで言葉をまくし立てる。
「ご、ごめんなさい。私用があるのを思い出したので先に行きます!」
私はそう言うと逃げるようにその場から走り出した。
どうしたというのだ。
こんなこと今までなかったというのに…。
私は二人と向き合うと決めた。
だけど当の本人たちは手加減など知る由もなく、隙あらば迫って来る。
前世では恋なんてすることもなくて、病気で亡くなってしまった。
言わば私は恋愛初心者なのだ。
それなのに二人の男性から迫られるなんてどう接していいのか分からない!
難易度が高すぎる!
「これからどうしよう~~」
人から見たら贅沢な悩みかもしれない。
だけど、私は頭を悩ませるのだった。
****
ハルカが去って行ったあと。
その場にアマリアとユーリの二人が取り残されていた。
幸いにも周囲の生徒達はおらず、二人だけだった。
「あーあ。せっかく、ハルカと二人きりで楽しく登校していたのに邪魔しないで下さいよ。殿下」
アマリアは刺々しく不機嫌な態度でユーリに言った。
最初の頃、彼の美しさに惹かれてユーリを手に入れようとしていた頃に比べたら大違いだ。
そんなアマリアの態度にユーリは涼しい顔をする。
「さっきも言ったように彼女は僕の婚約者だよ。女友達の振りをしている間は彼女に近づくのを許しているけど、彼女に触れるまでは許してないからね」
「執着気質がある男は嫌われますよ。それに私の方が彼女のことを理解しています。あなたよりは」
「そうですか…。でも男性として意識されているのは僕の方ですがね…」
「何を言って…」
ユーリの言葉にアマリアはハッとし、ハルカのことを思い出す。
先程の彼女は自分が迫っていた時より、明らかにユーリに対しての態度が違っていた。
もしかしたら昨夜の夜会で何かあったのかもしれない。
「一つ言っておくけど彼女に手を出すことは許さないよ」
「それはこっちの台詞」
これ以上の言葉は無意味だと互いは思い、各々にその場を後にする。
歩きながらアマリアは考える。
(あの二人がこれ以上近づく前に何か手を打っておいた方が良いかもしれない)
そう思いながら彼は歩みを進めるのだった。




