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30分後。

馬車を降りて私は今夜夜会が行われる会場を見上げた。


「随分と大きな会場ね…」


主催が貴族だと聞いてはいたが、このような大きな会場を借りられて、王族も招待できるとするとかなり力を持った貴族なのだろう。

それもうちと同じくらい…。


私は会場の門を潜ろうとする。

その時。


「ハルカ」


突然、声を掛けられて後ろを振り向く。

そこにはユーリ様がいた。


「ユーリ様。もういらっしゃっていたのですね」

「ああ。少し早めに着いてしまったからね」


ユーリ様は私の顔を見たあと、すぐに視線を逸らした。

もしかして、私の格好が変だったのだろうか。

出掛ける時、メイは絶賛してくれていたのだけど…。


私は少しだけ不安になり、ユーリ様の様子を伺うように彼に訊ねる。


「あの…もしかして変だったでしょうか…?」

「ご、ごめん。そうではないんだ…」


ユーリ様は口元を押え、耳を少し赤くして私から視線を逸らしたまま答える。


「その、きみがあまりにも綺麗だったから、思わず言葉を失ってしまった…。それだけなんだ」


ユーリ様の言葉に私は思わず、ぼっと顔を赤くしてしまう。

普段私にグイグイ迫って来るユーリ様なのに、

こんな照れ方をするなんてずるい…。

こっちが照れてしまう…。


ユーリ様は短く咳払いをし、気を取り直すように私に手を差し出してきた。


「さて、行こうか」

「はい」


私は彼の手を取った。

ユーリ様は私の歩幅に合わせてゆっくりと歩き、エスコートする。

顔が良くって、完璧で私を愛してくれる王子様。

だけど、どうして私が彼から愛されるのかが分からない。

小説の中でのハルカはユーリ様の婚約者になる為、様々なことをしてきた。

それなのに私になった途端、こんなに愛してくるなんて訳が分からない。


彼に訪ねたら答えてくれるのだろうか。

だけど、今は夜会。

聞ける雰囲気ではない。


「どうかした?」


自分でも気づかないうちに彼の顔を見てしまっていた私にユーリ様は訊ねる。

私はハッとし、慌てて誤魔化す。


「い、いえ何でもありません!」

「そうか」


そんな会話をしながら私達は会場の中に入ったのだった。



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