シスコンの兄
お兄様は驚き、固まってしまった。
流石のお兄様も人魚族の姫のことを知っていたみたいね。
人魚族の殆どは美形揃い。
特に王族となればその美しさは特別だ。
「いえ、私は姫ではなく王子になります。学園にはこの国のことを学ぶ為に留学して来たのです。そこで彼女とも友人になり、仲良くさせて頂いております」
息を吐くように嘘をつくアマリア。
本当は海辺に流れ着いたところを私とユーリ様の二人で助けたのに。
「そうでしたか。これは思い違いをして申し訳ありません」
「いえいえ、誤解が解けて良かったです。ちなみにユーリ様から彼女と出掛ける許可は頂いておりますのでご安心を」
(また息を吐くように嘘をついた!!!)
内心私は叫ぶ。
当然、ユーリ様はそんなことは知らない。
兄を安心する為の嘘なのだろう。
「それにしても彼女は愛らしいですね。ユーリ殿下の婚約者だなんてもったいない」
「そうだろう、そうだろう。あんな腹黒王子さっさとうちのハルカと婚約破棄してくれたら良いのだが…」
お兄様は両腕を組みながら、うんうんと頷く。
「お兄様!そんなこと言ってはいけないわよ。ここ街の中です!」
「悪い。つい本心が…」
「わかります。兄妹として彼女のことが心配になってしまいますよね」
「そうなんだよ。うちの可愛いハルカを本当は王子の婚約者にしたくないのに、王族の命令だから仕方なく従っているんだ。父上だって同じ気持ちだ。それなのに…」
「好き勝手しすぎですね。殿下は」
「ああ。全くだ」
私を置いてけぼりにしてお兄様とアマリアの二人はユーリ様の話題で盛り上がる。
お兄様はアマリアにすっと手を差し出す。
「きみとは気が合いそうだ。これからも妹と仲良くしてくれ。親密にならない程度に」
アマリアは彼の手を握り、にっこりと笑った。
「こちらこそ、宜しくお願いします。……親密になるなとはお約束できませんが…」
最後の部分はお兄様に聞こえないようにボソッと彼は言った。
「しかし、ハルカにこんな良い友人がいたとはな」
お兄様は上機嫌で笑ったあと、真面目な顔をして私に顔を近づけながら言った。
「お前が殿下と婚約破棄したいのなら、いつでも俺は力になるからな。それは父上だって同じこと。お前は結婚せず、家で気楽に暮らせば良い。お前一人ぐらい俺が養ってやるから」
「お断りします」
キッパリと言う私にお兄様は「そうか…」と呟きながら、ガッカリとした表情で肩を落とす。
「大体お兄様は我が家系の跡取りでしょう。お兄様が結婚する時、私がいてはお兄様の未来の妻になる方の邪魔になります。そんなの私はごめんですから」




