初めてのデート
「きみ以外誰がいるんだい?」
ユーリ様はにっこりと私に微笑んだ。
「夜会の主催はスイレン大公だ。彼には何かとお世話になっていてね。招待されたから行かない訳には行かないんだ。本当は国王である父上の役回りだが、父上は仕事が多忙だから」
スイレン大公は貴族の中でも有名な方で主に医療関係を生業としている。
特に彼が開発したポーションはある程度の怪我、病気の回復が出来る。
国から重要視され、一目置かれている代物だ。
重症の者にはさほど効果は見込めないが、それでも病気に掛かるものを救う確率と可能性を秘めている。
婚約者として夜会に参加するということは周囲の者たちに王子が私を婚約者として扱っていることを認識させる目的もある。
そうすれば私に無礼を働く者は出て来ない可能性がある。
(考えたわね…)
本来ならば喜ぶべきだろう。
王子の婚約者として大事にされて愛されていると周囲に見せるのだから。
だけど私の目的は違う。
ここは穏便に断ろう。
そうしよう。
「あの…私、その日は…」
「言っとくけど、きみは僕の婚約者だから拒否権はないよ。ドレスはこっちで準備するから安心してて良いからね」
にっこりとした腹黒な笑みを浮かべられて、逃げ場を封じられた私は結局……。
「……はい。承知致しました」
彼と一緒に夜会に参加することになってしまったのだった。
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日曜日当日。
私は街の広間の噴水がある場所にいた。
今日は彼と約束のデート。
白のシャツ、水色のふんわりとしたワンピースにガラス細工で出来たネックレスに髪型も普段とは違い、編み込みで髪飾りで纏めている。
今日のデートは市政での街を見て回るつもりはので庶民の服装に合わせてお忍び風に侍女にお願いをした。
貴族令嬢で王子の婚約者なら護衛を付けた方が良いだろうけど、今回は断った。
せっかく街の中を見て歩くことは早々ないので邪魔はされたくない。
だけど代わりに侍女から護身用の魔法具のピアスを付けさせられた。
魔法具のピアスは一見宝石のように美しいが持ち主の危険を察知した瞬間、持ち主を守る為に結界を張る仕組みになっている。
「約束の時間より、ちょっと早くつきすぎちゃったかな…」




