ハッピーエンドまでの作戦。
ユーリ様とのお茶会を突然、体調が悪いと言って断った数日後の放課後。
私は彼を学園の近くにある海に誘い、海辺を二人で歩いていた。
「きみからデートに誘われるなんて光栄だよ」
「いえ、そんな…。私の方こそこの前、ユーリ様とのお茶会を突然断ってしまいましたので…」
「体調が悪かったんだ。仕方ないよ。お茶はいつでも出来るし、それに僕はきみとこうして海辺を歩いているだけでも楽しいからさ」
ユーリ様は私に嬉しそうに小さく微笑む。
うっ…
そんな嬉しそうな顔をしないで欲しい。
罪悪感が押し寄せて来るよ…。
ミアは伯爵令嬢で外見の可憐さ、完璧な教養と知識を兼ね揃えていた為にアルダナ国の第一王子であるユーリ様の婚約者に選ばれた。
二人が対面したのは六歳のとき。
その頃から婚約者として彼と接しているが、これといった進展は無い。
彼とは定期的にお茶をしたり、出掛けたりする程度だ。
ユーリ様は今のところ私に恋愛感情を抱いていない。
彼は誰にでも優しく、困っている者がいれば貴族、庶民なんて関係なく手を差し伸べて助ける正義感が強い青年だが、その反面押しに弱いところがある。
幼い頃、過去ハルカが我儘を言って二人で買い物に行きたいと言ったら、最初彼は授業があるからと言って断ったが、しつこく食い下がらないミアに対して結局彼女の願いを叶えた。
我ながらなんという我儘な女だ。
今回私がユーリ様に積極的な迫らない限り、きっと人魚の姫であるアマリアと上手くに違いない。
必ず二人をくっつけて見せる!
それに伯爵家であるコーダニ家では跡取りである私の一つ上のお兄様が跡を継ぐ予定だが、きっとユーリ様と婚約破棄しても少しぐらい家に居座ることを許してくれるかもしれない。
両親揃ってお兄様は私を溺愛している。
私は適当に貴族の男性と結婚してそれなりの生活が送れればそれだけで満足。
私は自分のことよりもアマリアの幸せそうな顔を見ればそれだけで良い。
「ハルカ。どうしたんだい?もしかして、まだ体調が悪いのか?」
「あっ、すみません…。大丈夫です。全然平気ですので…」
心配するユーリ様の声に私はハッとし、慌てて彼に誤魔化す。
いけない。彼との会話に集中しないと。
私はふと海の方に視線を向ける。
白い砂浜から見るコバルトブルーに染まる海。空はいつの間にかオレンジ色に染まっており、とても美しく感じた。
前世では一度も海を見に行ったことはなかった。それこそテレビで見る程度。
私はその光景を目にして思わず口から漏れた。
「綺麗…」
「きみは海が好きなのか?」
「はい。初めて目にしたのですが、とても美しくて心が癒されます」
「初めて?昔、一緒に来たことがあったと思うが…」
「じょ、冗談ですよ~~。あははは」
私は慌てて誤魔化す。
危ない!そうだった!私は昔幼い頃に殿下と一緒に来たことがあったんだった。
また、私の我儘でユーリ様を振り回して。
「とりあえず、向こうの岩の近くに行ってみませんか?せっかくですし」
「そうだね」
私は彼に気づかれないように岩場の近くへと誘導するように歩く。




