推しヒロイン
確か岩場の近くにアマリアが倒れているはずだ。
小説では海を眺めていたユーリ様に人魚姫であるアマリアは彼に憧れて自身が持つ治癒魔法が使える魔力を魔法使いに全て差し出し、人間の姿を手に入れた。
しかし、それにはデメリットが存在する。
人間の姿になった彼女は海に帰ることは出来ず、意中の相手と結ばれなかったらこの世から消滅してしまうと制限時間まで付けられていた。
王子と結ばれなかったアマリアは最後の時まで健気に王子の幸せを願っていた。
なんという健気すぎる!!
私はアマリアが一途に王子を健気に想い、どんな辛い目に合おうとも決して弱音を吐かずに、いじらしく前へと進む姿に心打たれたのだ。
彼女こそ絶対に幸せになるべき!
(この辺りだよね…?)
私はユーリ様に気づかれないようにアマリアのを探す。
砂浜から僅かにゴツゴツした石が所々にあり、踵が少し高い靴を履いていた私は少々歩きにくさを感じてしまう。
しまった!
踵が低い靴を履いてくるべきだった。
内心後悔しながら歩く。
その時、私は足元にある大きめな石に躓き、転びそうになる。
(!)
「大丈夫?ハルカ」
何かに触れる柔らかい感覚とすぐ側でユーリ様の声がし、顔を上げると私は彼に抱きとめれる体制でいた。
「は、はい。ありがとうございます」
私は気恥しさを感じて彼から慌てて身体を離そうとする。
「きみは相変わらず、おっちょこちょいだね。まぁ、そんなところも可愛いけど。この辺は足場が悪いから僕の手に捕まって」
ユーリ様は笑って私に手を差し出す。
(あれ…?私ユーリ様のこと落としてないよね?なのにどうして、こんなに優しいんだろう…)
私はつい最近前世を思い出したばかり。
それにハルカとしての記憶の中でユーリ様と私の関係は婚約者だが彼に今までベタベタに甘やかされた記憶が無い。
寧ろハルカがゴリゴリ積極的に迫っている記憶しかないのだ。
きっと彼はハルカが婚約者だから優しくしてくれている。
きっとそうだ。
(ここで手を取らないと怪しまれるわよね…)
彼の手を取った私にユーリ様は優しく微笑んだ。
思わず胸が高なってしまう。
ドギマギする中、私は彼から視線を逸らして別の場所に目を向けた。
そして思わず目を大きく見開く。
そこには一人の金髪の少女が怪我をしてその場に座り込んでいた。
美しい金髪のゆるふわウェーブに金の瞳。
小柄で守ってあげたくなる可憐で可愛い顔立ち。
間違いない。
彼女こそ『人魚の涙』のヒロインの人魚の姫。
アマリアだわ!
小説と違って、どうしてこんなところで座り込んでいるのか分からないけど、これはチャンス!!




