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口止め。

「天使ぃぃぃ~~~!!あなたは私の可愛い妹よ。あの腹黒愚弟と違って」

「アイビー様、くる、苦しいです…」


きつく抱きしめられて、彼女に訴えるとアイビー様は「あ、ごめんなさい」と言って私を解放してくれた。


「ハルカ。今日は私と楽しくお茶会をしましょう。今まで以上に甘やかさせてね。そして…」


アイビー様は私の耳元に色気を含んだ妖艶を感じさせるような声音で言った。

「婚約破棄のこと聞かなかったことにするから、良く考えて。私の大事な妹」


アイビー様は私ににっこりと微笑む。

それは美しいく可憐で、そして私には笑顔の奥底に見えた黒さがあった。


あっ…この人私を逃がさない気だ……。


私は内心諦め、項垂れるように「わ、わかりました…」と同意するほかなかった。


夕方。

アイビー様とのお茶会も終わり、馬車で学園の寮に戻る最中、私の侍女であるメイが心配そうに私に話し掛けてきた。


「お嬢様。大丈夫ですか?少々お疲れのようですが……」

「ううん。平気。ちょっと久々の王宮だったからね…」


「そうですか。あのお嬢様…」

メイは一瞬だけ戸惑うように、そして言った。


「本当に殿下と婚約破棄なされたいのですか?」


「それは…」

「お嬢様。殿下は私から見てもお嬢様のことを心から愛していられると思います。常にお嬢様を優先にされています」


「確かに、あなたの言うとおりそうだと思う…。

だけど、愛が重すぎのよ……」

「そこは否定できません……」


私の言葉にメイは項垂れるように賛同する。

彼女の言葉も理解できる。

ユーリ様は私を大切にしてくれている。

それも行き過ぎるほどに。

きっと、このままユーリ様と一緒になれば私は王妃になれるだろう。

この小説の当初の予定どうり。


最初はアマリアとユーリ様をくっつける為だけに私は婚約破棄に全力を注いだ。

アマリアが消えて欲しくなくて、私の好きなアマリアに幸せになって欲しいから。


だけど幸せを願っていたアマリアは男性だった。

ユーリ様と結ばれることなく、彼の恋が実らなくても消えることはない。

そう理解した途端、私は目的を失ったのだ。


だからと言って小説どおりにユーリ様と一緒になりたいとは考えていない。

この世界でミアとして私は自分の好きに生きてみたいと思った。

まずはその為の婚約破棄なのだ。


私はメイに小さく苦笑した。

「私には王妃なんて荷が重いの」

「お嬢様…」


メイは気遣った表情を私に向ける。

そんな彼女に私は小さく笑って誤魔化し、窓の外に視線を向けた。

ゆっくりと流れていく景色を眺めながら内心ため息をついたのだった。


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