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第二話 継続は力なり(ガチで)

 俺、月見里栄太(ヤマナシ・エイタ)は決意した。


「必ず校内一のイケメンになってやる」


 イケメン。そう呼ばれる為には「見た目」は重要だろう。しかし、それだけでは駄目だと思う。

 他者から好評を博する為には「中身」も伴わなければならない。

 外見と中身。どちらも頑張る。その為に、何を、どのようにすれば良いのか?


「分からん」


 俺は先ず、その手の情報を集めることから始めた。イケメンになる為の道のりは、想像以上に長そうだ。

 尤も、今の時代、個人が情報を集める手段は幾らでも有る。その最有力はスマホだろう。


 スマホ。俺は持っていない。それを必要とするほどアクティブな生活を送っていなかった。だからと言って、SNSに触れる手段が無い訳ではない。

 俺には、親のお下がりのパソコン(ノート型)が有った。ワイファイ経由でインターネットに接続することができた。


 かくして、俺はSNSから情報を得た。それだけでなく、学校や町の図書施設を活用して、その手の本を読み漁った。

 兎に角、自分の手が届く全ての情報源から、手当たり次第に有用と思しき情報を収集した。

 それなりに時間と手間を掛けた。そのお陰で、イケメンになる為の方法が分かってきた。少なくとも、その極意と思しき根幹を知ることができた。


 イケメンになる為のコツ。それを簡潔に言えば「継続」だ。尤も、それはイケメン化に限った話ではないだろう。


 何であれ、期待する成果を得る為には、それなりの努力が必要だ。しかも、努力量は目標の大きさに比例する。


 俺の望みは、それなりに大きい。一朝一夕には叶うものではない。毎日努力し続ける必要が有る。それなりに――大変だ。


 しかし、俺は挫けない。挫ける訳にはいかない。その気も無い。それに、俺は継続を可能にする極意も発見している。


 継続のコツ。それを簡潔に言えば「スモールステップ」だ。楽なことであれば、俺でなくとも毎日続けることができる。


 毎日五分だけ勉強する。スクワット十回する。小説を一ページだけ書く。


 俺が設定した課題は、自分でも「簡単過ぎる」と思う。そう思うからこそ、躊躇いなく始めることができた。何事も、始めることが肝要だ。


 俺は「明日の為」と念じて、幾つかのスモールステップを考案した。それと並行して、自己改善にも着手した。


 外見と中身。それぞれどんな努力をしたのか? 俺の勉強机の前には、それをメモ書きしたものが張り付けられている。そちらに視線を向けて、真っ先に目に入ったものが――


〈外見に関する努力、及び改善に付いて〉


 外見。俺にとって、一番変えたいのは顔の造形だ。しかし、それはどうしようもない。だからこそ、どうにでもなる箇所を絞って、そこに全力で注力した。


 机前のメモには「髪形、服装、体形」と、三つの分野が書き込まれている。


 髪形と服装に関しては、敢えて流行を追わなかった。日々目まぐるしく変化するものに腐心している余裕は、今の俺には無い。


 流行に関係無く、より多くの人に好感を持って貰える要素。それは「清潔感」。


 長かった髪はバッサリ切った。横と後ろを刈り上げて、短めにまとめた。

 服はシンプル且つ、モノトーン。全体で三色程度にまとまるよう心掛けた。

 これら二つに関しては、それぞれ手を加えた時期が異なっている。髪は比較的最初に斬っているが、服を揃えたのは()()が定まった後のこと。


 体形。それこそが、俺のイケメン化(外見部門)に於ける最難関にして、最大級のパフォーマンスを発揮した要素だ。

 体形を改善する為に、俺は幾つかのスモールステップを用意した。


 朝と夕に行う軽い筋トレ。

 プランク三十秒、スクワット十回。軽いステップ運動。


 これらは、体幹と脚の筋肉を鍛えることに重点を置いたものだ。

 体幹を鍛えることで姿勢を矯正する。

 筋肉量の多い脚を鍛えることで、全身の脂肪率を軽減する。


 筋トレは、それなりに効果が有った。しかしながら、より以上に効果的な要素が、毎日の生活の中に有る。


 体型を整える最大の要素。それは「食事」。


 そもそも、人間の体は毎日の食事から摂る栄養で造られている。幾ら運動しても、太る食材を摂り入れてしまえば元の木阿弥(もくあみ)だ。

 俺は太る食材を避け、痩せる食材を摂り入れるよう心掛けた。


 太る食材は、甘い飲食料と、お菓子を含めた揚げ物。

 痩せる食材は、お茶などの甘くない飲料と、茸類を含めた野菜。それから、納豆やヨーグルトなどの発酵食品。


 前者は、俺の好物ばかり。後者は、苦手と言えるものばかり。この事実を目の当たりにして、俺の眉は「八」の字に歪んだ。

 しかし、この試練を乗り越えない為には望む体は得られない。それどころか、将来的に健康を損ねる可能性が高い。

 痩せる食材を摂り入れることには「健康寿命を延ばす」という大事な意味が有った。


 健康寿命を延ばすの極意。それは「腸内環境の改善」。


 そもそも、栄養を吸収する場所はどこか? 腸(小腸)だ。そこが汚れていれば、必要な栄養素が全身に行き渡り難い。それどころか不要な栄養、汚物を垂れ流すことになる。これがどういうことか?

 体を部屋と考えて、そこがゴミに塗れているとする。時間が経つほどに、カビも生えれば蛆も沸く。Gを始めとした嫌な虫も寄ってくる。

 殺虫剤を撒こうが、消臭剤を撒こうが効果は薄いだろう。一時凌ぎに過ぎない。時間が経てば元の木阿弥だ。


 このゴミ塗れの部屋が、人間の体でいうところの「肥満」。


 肥満の真実を知ったとき、俺の「痩せる」という熱意が一層増した。兎に角、痩せようと必死になった。親達を巻き込んで頑張った。頑張り続けた。

 三か月ほど経過した頃には、出ていた腹が凹んでいた。内臓脂肪が大幅に減少していた。尤も、腹の皮下脂肪は結構残っている。

 人間の体の構造上、腹の皮下脂肪は最後まで残るようだ。これを取り除く為には体脂肪率を下げる必要が有る。


 ここまで来たら、やる。


 俺は引き続き努力を継続した。尤も、ここまでの変化だけで、それなりの効果は表れている。


 見た目が改善したことで、俺の周りに人が寄ってくるようになった。しかも、距離が近い。その事実は、俺を大いに困惑させた。だからと言って、怯む訳にはいかない。イケメンならば、自分から寄っていくくらいの気概が必要だ。

 尤も、その行為は外見の領分ではない。その事実を想起した瞬間、俺の視線は机前の特定の個所に吸い込まれた。


〈中身に関する努力、及び改善に付いて〉


 中身。性格の改善だけでなく、能力の向上も含んでいる。

 これらを鍛えたことで、俺の名前は校内ところか校外まで轟くこととなった。


 一体、俺は何をしたのか? その方法に関しては、きっと多くの人にもできることだと思う。

 尤も、成果に関しては「運」という要素が大きく絡んでいた訳だが。

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