⑥ 炎
ライシエルが槍を俺の顔に突き付ける。
が、何か、変だ。空気が、急に乾燥したような、ジリジリとしている。死ぬ瞬間に人間が超集中力で感じる特別な感覚、とか、
そういうのじゃなく、明らかに、空気が変わった。
なんだ・・・? ライシエルもそれに気づいたようだ。槍を両手で持つ。
崩れた建物の、瓦礫が動く。中に人が居たのか?と思ったが、人じゃなかった。いや人の形ではあった。
ライシエルは振り向いてそれを見る。
瓦礫の中から現れたのは、ドレッドヘア、異常なまでに白い肌。美白とか、色白とか、白人とか、そういう白じゃなく、
本当に白。完全な白。京都の舞子がやるような、白い化粧を分厚く塗ったぐらいの白い肌。
そしてド派手な黄色いスーツ。
顔を見て、ライシエルが後ずさる。
「貴様はッ・・・なぜここに・・・」
ドレッドヘアの男が答える。
「天使が教会に居て何が悪いんでぇ。」
俺が破壊したのは教会だったらしい。
「あれは・・・誰なんだ?」
腕輪に聞く。
「四大天使の一人、ラファエル。最強の天使の一人よ。」
俺が鏡の悪魔と対決するために、水を探してくれ。と俺はアスタロトに頼んだ。アスタロトは何でも見ることが出来ると言っていたから。
その結果案内されたのがこの場所。全部見ていたのだ。その目で。
全てこの状況を作るための誘導だったのだ。
「おめぇよぉ。売ってんのか?喧嘩を、この俺に。」
ラファエルがこちらに向かって歩き出す。見た感じ、明らかにブチギレている。目を血走らせて、歯を食いしばり、ゆっくりと歩いてくる。
「それをやったのは私ではない、この男とアスタロトがやったのだ。」
ライシエルは必死に言い訳をしている。
つまりそれほどの力の差があるということだ。
「人間相手に本性出してるおめぇが無関係なわけねぇだろ。」
「くっ・・・」
ライシエルがラファエルに向けて槍を構え、立ち向かおうとする。
ラファエルの歩みが止まる。
「動くな。」
ラファエルがそう言葉にしただけで、
へたり込んでる俺の周りに、円状の線が出現した。その線は、燃えている炭のように、火は出ていないが、にらにらと赤く燃えていた。
それはライシエルも同じだった。足元に円の線が出現している。
「動いたら殺す。」
ラファエルが再び歩き出す。ライシエルまで、後五歩か三歩というところまできた。
「うっ・・・うああああ!!」
その圧に、思わずライシエルは槍をラファエルに突き刺す。
槍はラファエルの体に深々と突き刺さった。
突き刺さったが、貫通していない。
ラファエルの体に触れた部分から、槍が炭になり灰になり、崩れ落ちていた。
体には一ミリも刺さっていない。刺さる前に燃えたのだ。
「動くなつったよな。」
ラファエルはライシエルを指さす。
ガッ
真っ青な炎の柱が天高く立ち上がる。
一瞬。ほんの一瞬でライシエルは消えた。
その後には、ライシエルだったであろうモノの灰だけが残っていた。




