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⑦コーヒーを買いに行こう。パート2


恐ろしい。天使とは、聖なる清らかな存在であると思っていた。が。違う。


圧倒的な力。天の力を行使するモノ。天使。


その天使が、俺に向かって歩いてくる。


俺は胸を刺された傷からの出血で、動くことができない。


傷口を抑えることで精いっぱいだ。


ラファエルが俺の目の前まで来た。俺も灰にされるのか?怖い。怖いぞ。ライシエルの、悪魔から受ける恐怖とは全く別の、


畏怖。


「いつまで寝たふりしてんだ。殺すぞ。出てこい。」


ポケットに手を突っ込んだまま。仁王立ちで俺に、いやアスタロトに話しかけている。


「やーねぇ、私は怪我人よぉ~?もっといたわってくださる?」


アスタロトが出てきた。服を着ている。ピンクと赤の、イチゴを真っ二つにしたようなドレスのような服を。


「テメェが教会壊したんだろ。殺すぞ。」


ラファエルの喋りは、落ち着いているが、今にも実行しそうな真実味があった。


「だってああしないとこの人間も殺されちゃうところだったんだから。」


「この人間を助けるとしても、俺がお前を見逃す理由にはならないな。」


ポケットから片手を出すラファエル。ゆっくりと手を伸ばしてくる。


アスタロトは抵抗しようとさえしない。それほどの力の差があるんだろう。


顔は笑っているが、どこかひきつったようなこわばった固さを感じる。


アスタロトは一歩、下がる。地面に書かれた円から、出そうになる。


俺はなんとか、立ち上がり、間に割って入る。


「やめろ。」


驚くラファエル。


「・・・?なぜ止める?お前にこいつを助ける理由は無いだろう?」


今度は俺が驚く。確かにそうだ。俺は何をやってるんだ?なぜ?


そう言われて、自分で考える。自問自答。


「かわいそうだろ。」


「は!!」


乾いた笑いをするラファエル。


「こいつが!?この悪魔を!?かわいそう!?ははははははははは」


「何がおかしい。」


「よし。許そう。お前のその善良な心は素晴らしいモノだ。」


ラファエルの体が光ったと思ったら、一瞬で消えていった。


振り返ると、アスタロトも居なくなっていた。腕輪も消えていた。


胸の傷も、左腕の傷も、消えていた。


俺は、唖然とするしかなかった。




一週間後、俺は大学のアトリエで寝起きしていた。


学校に部屋が燃えたと説明をし、特別に泊まり込むことになった。


他にやることも無いので、彫刻の作業をやっている。



ハンマーでノミをカンコン叩きながら、俺は考える。


なんだったんだ、あの騒動は。


裸の悪魔、爆発、爆発、爆発、透明な鏡の悪魔、そして天使。


本当に、なんだったんだ。あいつらは。


俺の願いを叶えるとか言っときながら、結局傷治しただけじゃないか。


俺の女嫌いは、さらに悪化した。より女が苦手になった。


髪の長い女を見るだけで、アスタロトを思い出し、ビクッとなる。


腕輪もダメになった。腕時計も気持ち悪くて嫌だ。


まったく・・・ひどい目にあった。悪魔とかかわってもいい事なんか何もない。いや、一つ、良いモノをもらった。


彫刻は、まだシルエットの段階だが、形になってきた。


くるくるとカールした髪の女。アスタロト。俺が出会った最も美しい女。


あの美しさを作品として表現したい。芸術家として、重要なモノ。


目指すべき美。


それを手に入れられたということは、何よりも価値のあるコトだ。


コーヒーが切れた。


大学には俺の買ってる銘柄のコーヒーは置いていない。いつもの珈琲専門店まで行かなければ。


俺は作業場を出て、コーヒーを買いに行くことにした。


もうあんなことは二度とごめんだし、二度とないだろう。と思っていても、また、あの腕輪が落ちてないか、どうしても見てしまう。


それほどまでにあの体験は強烈だった。


コーヒーをまた山ほど買い、両手で持ちきれないほど抱え、帰る途中。


あの隙間に目をやる。あのアスタロトと初めて出会ったあの場所に。


「げ。」



終わり。


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