④ バスに乗ろう
「バスに乗ってよかったのかよ。」
「さすがに人混みの中で襲ってこないわよ。多分。」
「で、何に追われてるんだよお前は。」
バスの中で、腕輪に話しかける俺。
「…悪魔よ。鏡の悪魔。」
答える腕輪。
「鏡の悪魔?」
鏡の悪魔ってなんだよ。
「ライシエル。魔王の私よりも位の低い若い上級悪魔。成り上がるために私を狙ってきたってわけ。」
「なんでそんな格下にやられてんだよ。」
「…私は、あらゆるものを見通す目を持つ。なーんでも見ることが出来る。ただ、鏡だけが、どーしても見えない。」
「なんでだ?」
「知らないわよ。鏡は私の弱点。だからライシエルとは相性が悪いの。本当は私の方が百億倍強いわ。」
「助けてくれる仲間とか居ねぇのか。部下とか。」
「あのねぇ、悪魔にそんな情があるわけないでしょ。強いモノに従う。ただそれだけよ。私が死んだら新しい魔王に付き従うだ
け。だから悪魔に助けてもらうなんて、無いわそんなの。」
「・・・そうだな。」
本当は、悪魔は冷たいな、と言おうと思ったが、それを言えるほど、人間も情があるわけじゃないな。と思った。
「もう一回聞くけど、本当にバスに乗って襲われないよな?」
「そうねぇ、例えば、リンゴを一つ盗んだからと言って、いきなり警察は来ないでしょう?」
「いや…それは来るんじゃ…」
「本当に?例えば警察署に行って、リンゴ一つ盗まれました。と言って、じゃあ警察が何人その場で動く?って話よ。」
「あー、そう言う事か。」
つまりこういうことだ。
リンゴを一つ盗んでも警察は即時動かないが、リンゴを10個盗めば警察が動く確率が高くなるということだ。
「悪魔が人間界で人を殺すのは、本来禁止されてることなわけ。それがアリなら、魂欲しさに好き勝手殺しまくる悪魔が出る。
それを止めるために天使が現れて戦いになる。そうなると最終的に天界との戦争になるわけよ。ま、あたしはそれでもいいけど。
でも、戦争をやるとなったら勝つ算段が無きゃダメ。その状況が整うまで戦争は禁止。ってサタン様にきつく言われてるわけー」
「俺たち人間はリンゴかよ。」
「宝石と言ってもいいわ。地上という樹木で育つ甘い宝石。私たちはその宝石が欲しい。
だからそのリンゴの木に火をつけるようなバカは、他の悪魔からもぶっ殺されるってわけ。」
「だから人の中に居れば安全というのか。」
「そうよ。人を殺すなんて馬鹿のやる…」
腕輪のアスタロトが言い終わる前に、
バスの前半分が突然、切断した。
突然、切れ込みが入り、走っているバスが、二つにちぎれた。
俺は一番後ろに座っていたが、バスがバランスを崩し、傾き、ギャリギャリと勢いのまま地面にこすれている。
前半分は右往左往した挙句、電信柱にぶつかった。
後ろ半分、俺が乗っている方は、コントロールを失い、対向車線から来た車にぶつかった。
車が自分の真正面に突っ込んでくる。
そして、バスの中に、車が乗りあげてくるという異常な景色を見る。俺は手すりに必死に捕まる事しかできない。
「うあああっ」
破片が飛んで当たる。
バスが止まると同時に完成の法則で、俺は前に吹っ飛ばされ、車のフロントガラスに当たる。
なんで・・・なにが・・・
俺は必死に、車とバスの間から、外に出る。
バスには7人ほどが乗っていた。
外に出ると、生きてるもの、動かないモノ。半々だった。
「おい・・・どうなってる・・・」
腕輪に聞く。
「相手は思った以上にヤバいヤツってことね。」
淡々と答える。悪魔らしいよ。と俺は思った。




