表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

②裸の悪魔


朝、いや、朝というか9時に目が覚める。まだ幻覚が見える。


まだ裸の女が俺の布団に入っている。


寝起きで脳がバグっているのだろう。


俺はそれを無視して朝飯を作る。


パン二枚、ハム、チーズ、マスカット。コーヒー、毎日同じ朝食だ。


マスカットの理由は「皮をむかなくていいから」健康のためにフルーツを食べるようにしているのだが、


リンゴやブドウは皮をむくのが面倒だ。オレンジやみかんの柑橘系は、あれ意外と胃に悪い。酸味でやられる。


いつも通りの食事を食べ終わり、食器を下げて、部屋に戻ってくると、まだ幻覚が見える。


流石にこんなリアルな幻覚がずっと見えてるのはおかしい。まさか、と思い、恐る恐る触ってみると、


冷たい。触れる。柔らかい。すべすべしている。・・・いやこれ幻覚じゃねぇ。現実に存在してる。


匂いまでする。桜?バラ?の香りがする。


裸の女が目を開ける。俺はビクッっとひるむ。


起き上がると、きょろきょろとあたりを見回し、口を開いた。


「小汚い部屋ねぇ。」


「なんだ、お前は。」


反射的に聞いてしまった。


「・・・」


女が立ち上がる。


デカい。180俺よりデカい。190はある。


くるくるカールしたあずき色の髪。白い肌。赤い…いや、ピンク色の目。赤いマニキュア。そして全裸。


俺の部屋はボロアパートの6畳一間。兼アトリエとして使っているので、素材と作品と画材で埋もれて、


机一つと布団一つ置いたらもう限界という狭い部屋。


そこに、全く似合わない。異常なまでに美しい、貴族のような、完璧な裸の女。


俺はその圧に完全に飲まれている。ここは俺の部屋だぞ。


「私の名は悪魔伯爵アスタロト。あなたにお願いがあるわ。私を助けて欲しい。」


情報が多い。悪魔、いや頭に変な羽が生えてるなとは思ったが、悪魔。その悪魔が俺に助けを乞うている。


助けを乞うてる割りには、態度がデカい。全裸で堂々と腰に手を当て仁王立ち。


「助けるって・・・何を・・・」


悪魔は俺を指さす。


「その腕輪、それを付けてる限り、貴方の生命力を分けてもらう。私の傷が回復するまで、」


・・・生命力?いや待て、待て待て待て待て。いや待て。


「一寸待て、俺の命を勝手に吸い取ってんのか?これが?」


「別に死にはしないわよ。ちょ~っとおすそ分けしてもらってるだけよ。大体その腕輪を自分でつけたのはあなたでしょ?」


悪魔だ。こいつは本当に悪魔だ。この話が通じない感じ。


「これはどうやったら外れるんだ。」


「私が回復したら外れるわよぉ~。」


「生命力ってそれ寿命とか命とか大丈夫なのか」


「大丈夫よ~死にはしないわよ~。」


コイツの言う事が正しい保証が無い。悪魔の言う事をどこまで信用すればいいんだ。


そして女。女の姿。非常に不愉快。


「そうねぇ、傷が治ったら、あなたの願いを一つ、叶えてあげましょう。もらった生命力に見合うモノをね。」


「その傷は、何の傷なんだ?見たところ、どこにも傷は無いが。」


裸をくまなく見ても、傷は無かった。


「この姿は、形だけ取り繕ってるだけの、仮の姿よ。わかりやすくするなら、こんな感じねぇ」


そう言うと、悪魔の体は、突然、半分以上、無くなった。残ってる方を見る方が早い。


顔、右腕、腰から下。それ以外は、鮫に食われたように、ごっそり無くなっていた。


「うわっ」


思わず声が出た。


一体どうやったらそんな傷が・・・


「それはねぇ・・・」


アスタロトが答える前に、その理由が分かった。


突然、俺の部屋が爆発した。


一瞬、何が起きたかわからなかった。


自分の意識が戻ると、俺は空中に居た。地面がぶつかってくる。


強い衝撃。痛みじゃなく困惑。なんだ?何が起きた?


「あいつが来たのよ。逃げないと死ぬわよ」


腕輪から声が聞こえる。


俺は裸足のまま、走り出した。


振り向くと、俺の住んでたアパートが燃えている、燃え盛る炎に、黒煙。


時間がたつほどに体の痛みが襲ってくる。アドレナリンの作用だ。瞬間的な痛みは興奮によってマヒするが、


興奮が冷めるほどに痛みが襲ってくる。


耳が痛い。ぶつけた右半身も痛い。裸足で走るから足も痛い。


そして何より部屋に置いていた俺の作品が燃やされたことが許せない。なんで俺がこんな目にあってるんだ。ド冬に。


買ったばかりの珈琲も燃えちまった。


ちくしょう。なんで俺がこんな目に。


俺は真冬のアスファルトの上を、足が凍るような冷たさに耐えながら、走り続けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ