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「そうだけどさぁ‥‥って言うかもしかして、それで初っ端に、鬼を相手にしなく
ちゃならないこの大陸を、ワザワザ選んでくれたってわけなのか?」
「アラァ、そうなのワザワザ。ワタシってば如才ないから~」
「単なる偶然かよ‥‥ったく」
「ワザワザ選ぶまでもなく、まずは適当なんじゃなぁい? 人族の社会で人族を害
しちゃったら、やっぱり犯罪者か異端者のレッテルを貼られちゃうし」
「ま、当然だよなぁそれは‥‥魔族は、なんか不明なことが多そうで、鬼族より厄
介な気がしちまうし」
「そ。日本のとつくり方が似ている鎧も、鬼族の伝統武具なんだもん。魔族はファ
ッションとしてしか、鎧兜や甲冑を着用しないみたいなの」
「ファッションねぇ‥‥とにかく適当かもな、オレに鬼の相手からってのは」
魁の祖父が営む工房では、博物館や個人が所蔵する鎧兜の、メンテナンス及び復
元修理だけでなく、累代相承を含めた豊富な経験による蓄積を基に、レプリカの製
作やカスタムメイドも手懸けていた。
そのため、魁が今よぎらせた魔族のイメージは、カネに飽かせて、コスプレで披
露したい注文を、断り難い紹介者を通じて強請してくる、海外のにわか鎧マニア連
中‥‥。
心底好きがゆえの抑えきれないこだわりならば、魁としても、古クサく工手間な
だけの伝統様式をひたすら忠実に準えるよりは、格段に愉しい仕事になる。
けれども、ファッションと漫言されては、生きていくためでも、ヤル気は完全に
消滅し、死んだ方がマシだと思えてしまうに違いない。
それが回避できそうなだけでも、dooにではなく、巡り合わせの好さへ、謝い
たくなる魁だった。
「でしょ? 鬼族は鬼族で、逆にテキトーに思えるくらい、杓子定規だけど~」
「そうなのか? 警備にあの鬼ババ小隊しか出てない上に、ここまで来てるのに、
人けも鬼けもまるでないってことも、拍子ぬけなカンジはしてるんだけど」
「まだ、大陸同士が元どおりに離れたことを知らないから、この町の代官たちの所
へそれぞれ集まって、どうしようか頭を抱えているんじゃないかしら?」
「‥‥代官って結構高い地位だろ、この町には何人もいるわけ?」
「この大陸に幾つかある港は、どこの国のモノでもなくて、各国から、諸侯の代理
として役人を出張らせて管理しているの」
「‥‥やっぱ、かなり遥任っぽい代官制ってことだったり?」
「役人と言っても、行政や官吏制度がきっちりあるわけじゃなく、諸侯が直接だっ
たり、側近が間接的に役目を命じたそこそこの鬼人、ってカンジね」




