004-25
そう凄んでみた魁もまた、とりあえず明王斬りを抜いて、正眼にかまえてみただ
けでしかない。
だのに、老鬼女隊長は即下、オーガともどもパタリと横倒れた。
──ところが、どちらも意識は失っておらず、一体何がどうなったのかわからな
いといった感じで、魁たちへ白黒させた目を見開くばかり。
「キャ~、凄いじゃないの魁っ」
「‥‥あぁ、オレもビックリだ‥‥」
「こんな具合になんて、魔述だとチョット手間がかかちゃうから、ワタシはまずや
らないけど、何を思って斬ったわけぇ、と言うか明王斬りを抜いたのよ?」
「‥‥さぁ? 別に何も、斬ろうなんてすら思ってない気がするし‥‥」
「チョットォ、しっかりしてよね。こんな霊妙不可思議なことほど、言語化が大事
なんだから~」
「でもなんか、ホント感覚的に、この鉄刀が動かせなくなったって言うか‥‥」
「ウンウン、それで?」
「その鬼ババとオーガにがっちりつながって、オレの力じゃなく支えられて宙に浮
いた瞬間があった気がする」
「フ~ン‥‥ほかには、何をカンジちゃったぁ?」
「目に見えないけど、切っ先から何かが出て行って戻って来たカンジ、一ピクもし
ない超高速でもって‥‥」
「それって、明王様だったり~? その鉄刀には明王が宿っていて、それが斬るっ
てことだったのよきっと」
「はぁ? 宿るとか言われても‥‥なんだかなぁ」
「それの銘に付けられている阿遮羅嚢他は、青黒い明王でも主尊、お不動様のこと
だもん」
「‥‥不動明王が化現してるってか? この鉄刀は‥‥」
明王斬りを眼差しそうになる魁だが、不遜となって目を潰されでもしたらしたら
──とビビって、とにかく今だけは直視などできやしない。
「そう言うことにしておきましょ、最高の箔付けになっちゃうからぁ」
「ありそうだから焦るよなぁ、こっちの世界だとマジガチで」
「魁の純然な願いを、不動明王が成就してくれただけじゃない? イマイチわから
ない内に気絶させたら、それこそ、そのリアルをリアリティーのない悪い夢だと片
づけられちゃうって、言ってたでしょ」
「そうだけどさ‥‥ガチかぁ、マジで悪い夢みたいなんだけど‥‥」
「要は、この鬼ババたちが、ワタシたちのヤバさを心底思い知らない限り、身動き
できないのかも~」
「口もアウアウすらできないみたいだから、声も出せないんだなきっと‥‥オレた
ちの完全勝利かこれ?」
「ま、そう言うことでいいんじゃなぁい? 先はまだまだ長いんだし~」
dooが意外にも鷹揚で、魁の気持ちもたちどころに軽らかになる。




