004-19
「冗談だろ。どうすんだよ、活路を開かなくちゃならない時に斬れもしなかったら
っ? ‥‥生殺与奪の権は、いろんな意味でオレが握らさられちまってるわけだっ
てのか」
「ま、チートの代償としては妥当なんじゃない?」
「そんな縛りが一切ないのがチートなんだけどなっ。それもなんか、オレ自身です
ら判断しきれない、超ビミョ~なトコがかなりヤバげだし‥‥」
「ガンバってね~。知らないけど、信じているからぁ」
のほほんとしたdooの口ぶりに、目の前が一瞬グラついてしまう魁だった。
「ホント、信じられねぇっての‥‥て言うか、段取りが狂ったんじゃないか?」
「ンン~? どしてぇ」
「これまで程度の時間じゃ、さすがに山奥の雪が溶けて、被害が出ることはないだ
ろ。あの鬼人の隊長に、何て言って取り入るんだよ?」
魁は思い出したように向きなおる。
もう、スグそこまで来てしまっているホブゴブリンたちを立て越して、オーガの
肩首に乗る鬼人へと、とちめきながら目を澄ます。
「任せておいてちょうだいな。一度言ってみたいワックワクなワード、プランBっ
てヤツゥ?」
「‥‥イチイチ信じる難度を上げるなってのっ。とにかく、その戯れた口調はやめ
とくのが得策だぞ。女性同士じゃ、上手くいくことも、まずいかなくなっちまう」
魁の目は見惑いつつも、鬼人が女性であろうと臆断、しかも老女。
もう二〇メートルをきるほどに、接近されているその距離になるまで、魁がその
隊長から、それ以外の基本属性を気色取れなかったのは、隊長であるという認知バ
イアスが、強烈にかかってはいたものの、第一に姿勢の良さ。
大岩の上での、しゃっきりとした立ち姿もそうであったが、現在も、ウマに騎乗
しているのと変わらない、堂堂たる背スジの伸び具合。
さらには、オーガとホブゴブリンたちは装着していない、両肩に立て垂らした大
袖が、老鬼女隊長の肩幅ばかりか、全体的な線の細さまでをも見紛らわせていただ
けとも、魁は覚らされてくる。
老鬼女隊長が、前立のない兜を被っているかに見えたのも、白髪が多めに交じっ
た長い髪を後ろで緩るかに束ねていたからで、髪が左右へと膨らんだアウトライン
にすぎなかった。
二本のツノで固定される造りの額当ても、付いている鉄板から、くすんだ色であ
ることが、影響していたのだとも合点がいく。
そして、全く嫉妬に燃えていない般若、といった顔立ち自体の上品っぽさが、遠
目には、若武者の印象を懐かせる奇効を現じていたことも、魁は認識せざるを得な
かった。




