004-18
ちんまりした盆地、と言うよりも、筋立った岩肌が、急な角度で落ち込んだ直径
五〇〇メートル足らずのクレーター内部、を思わせる小深い地形。
その岩壁が円く囲う一部が欠けて、東の海が覗ける狭隘な開口部はあるものの、
そこから歪な半月形に広がる入り江があり、石積みでできた桟橋らしき構造物も一
本突き出していた。
桟橋を起点に、道が町の中を迷路みたいにのたくってもいるが、半壊したバラッ
クばかりが、互いに喰らい合う感じに犇めき建っているので、全戸に通じていると
は思えない。
──dooが説き及んだ小隊の姿も、五〇メートルほど左手に下った所で集結し
ていて、そこに突き出た大岩の上から一人、我猛しと顎を上げ、魁たちを注視して
いるのが、鬼人の隊長だということも判然となる。
その横には、大岩を一まわり小さくしたサイズ感のオーガも仁王立っており、縦
横ともホブゴブリンたちの倍はあることが、明潔なまでに目測できた。
それらを気疎げに瞠目している内に魁は、隊長が、オーガの首へ跳び乗るように
跨る様まで目撃する‥‥。
乗り物にするとはそういうことかと、渙然氷釈したばかりか変に想像が膨らんで
しまい、オーガの肩車でこちらへと向かい始めた隊長に先んじようと、ホブゴブリ
ン五匹も、かまえた槍の穂先で魁たちを捉まえつつ寄せかけていることには、気を
配れない魁だった。
「アラァ。見てよ魁、ワタシたちが来た岬が消えて海が広がってるぅ。今、チョッ
ト鬼たちへ意識が向いた瞬間に、元に戻っちゃったみたぁい」
dooの呼びかけで、ようやく自分たちを囲い込もうと、躙り寄っている小隊の
意図にも気づく魁ではあるが、ふり返り、己が目で、dooの知らせが事実なのか
を確認せずにはいられない。
「マジでかっ‥‥これって、ガチでどこにも誰にも何の支障もなく、元どおりに戻
ったってことなのかな? それならバンバンザイなんだけど」
「そうなんじゃないの~? 魁がどう願って斬ったのか知らないけど、心底から魁
がそう望んでいたのなら、当然でしかないわよ」
「当然とか言われても、オレがどう望んで斬ったかなんて、オレ自身わかるもんか
ってのっ。それも、心底からだなんて‥‥」
「だから、別にそんなにこまかく気にすることなんかないんじゃないのぉ? 結果
だけでなく、斬れるかどうかから、斬る者の心根次第ってことなんでしょうし」
「‥‥オレに害意があったら被害を出すし、そもそも信じてなけりゃ、思いどおり
になんて斬れないってこと?」
「かも~」




