004-17
「同族同士なのに、略奪するから退治もされちまうのか? 鬼だなやっぱ‥‥」
「位地の違いはあるんでしょうけど、元いた世界で、人が益獣を使って害獣を狩る
のと一緒なの」
「‥‥鬼の有益性と有害性は、鬼人が決めてるんだよな?」
「やっぱり力や体の強さより、知能の高さの方が、何にでも秩序がつくれるから、
鬼人が上に立てちゃうわけ。その秩序の中で使えるほど、上に侍れるだけのことで
しょ」
「現代社会の獣心を隠した弱肉強食と、変わらないってわけか‥‥オーガやホブゴ
ブに同情できちまいそうだよな、境遇的には一緒っぽいんで」
「なら肩の力をぬいて、仲好くなれるようにガンバってねぇ。刃のない明王斬りで
も、腰から抜いてかまえたら、向こうは殺しにかかって来るんだから」
「だろうけど‥‥ガチかぁ‥‥」
胃の辺りが、キュッと絞めつけられるリアルすぎる感覚に、動揺を禁じ得ない魁
だった。
「抜くと決めたら、中途半端は絶対ダメよ、相手を完全に闘えなくしちゃう覚悟じ
ゃないと」
「‥‥殺し返せと言われなくて、一安堵だな。まぁdooの口八丁手八丁は信頼し
てるんで、限界まで抜刀しないようには心懸けるって、重重」
「そうは言うけど、魁はもう、誰も信じられなくなっちゃっているんだもん。だか
らマジガチに、限界までガマンしてみてちょうだい」
「ああしろ、こうしろ、ギリまでするなとか、オレで遊ぼうとするのも大概にして
欲しいよなぁ‥‥」
「まずは、戯れつくワタシでリハビリができなくちゃ、快方なんかに、向かうはず
もないし~」
「‥‥単に、何事も戯れついて愉しもうって魂胆を、正当化しようとしてるとしか
聞こえやしないけどな」
「しっかり聞こえているのなら、それでいいの」
「ったく。オレにそうしたドッキリ仕立てのリハビリが必要なんだとしてもだ、ど
こまでマジガチなのかをわからなくしてるdooに。鬼族まで加わる荒療治となり
ゃ、失敗った時の逆効果も、しっかり考慮しといてくれないと困るんだからなっ」
「失敗した時には、鬼族の世界を敵にまわして魁を守りぬくだけだもん。より効果
的な状況に、陥っちゃうことが狙えるって寸法なのぉ」
「言ってろ~。って言うか見ろよdoo、その頂上を越えたら、あとは下る一方み
たいだぞ。もうこの辺に、ここより高い場所がないことだけは確かだ」
緩やかで広いが、ただの荒原でしかなかった傾斜地を登りつめた二人は、やはり
鬼の大陸らしい、荒廃じみた寒景を一望にする──。




