004-13
dooは西に七〇メートルほどの位置で、こちら側の岩壁と高さまでが最も近い
奇岩を指差す。
その、巨大なオオカミがお座り姿勢で遠吠えをしている様に見える岩塊は、イズ
ドーズ大陸へのタラップとして、確かに魁にも具合がよさそうに思えてくる。
オオカミの背すじとなる部分は、幅が狭く、稲妻が走るみたいにジグザグを描い
て下っていて、周辺に並み寄る巨岩へも幾つか飛び移って行けば、磯辺を越えて赤
茶けた大地まで、最短距離で辿り着けそうだった。
「まぁな。て言うか、一応dooのために安全そうなルートを見つけてたのに、そ
の自信はどこからくるんだよホント?」
「自信~? そんなことを言っちゃう、魁がないんだとかぁ?」
「オレはズバぬけたモノが何一つないけど、身体能力の数値は全部、高校生平均よ
り高校生記録の方に近いんだ。女子のトップなら、何だろうがどうにか上まわって
るんだけどな」
「だってワタシ、フィジカル面は魔述で魁をお手本にしているからぁ、魁が動ける
ことは動けちゃうんだもん」
「‥‥マジでか? そんなことまできちまうなんてな‥‥」
「そうでないと魁が間怠いでしょ。何かとモタついて、ウザがられたくないからイ
チイチ」
「‥‥ズリィんだよイチイチ。それでさっきもオレより先に失速するどころか、手
ぶらな分も余裕カマし気味に走れたってわけかよ? それはそれでウザムカつくっ
ての」
「ズリィはズルなの、言い方を変えたってダメなんだからっ。今度またワタシをズ
ルいって言ったら、お次は、魁に山を斬り退かす段取りをしちゃうわよっ」
「ったく。わかったらから、早く行こうぜもう――」
「奉承奉承~。オンスケ志向でヨロシクなの」
魁は崖っぷちに沿って歩きだしながら、長い明王斬りを、腰へモソモソと差し込
みにかかる。それもとにかく丁重に。
「鬼人かぁ、それでオーガも胴丸を鎧ってたんだな」
「‥‥どう言うことぉ?」
「こまかい札を、体に合わせつつ、動き易さまで考慮しながらつないでく綿密な作
業を、あんな、何もかもが大ぐれてそうなオーガが、自分でやったとは考え難かっ
たんだよな」
スグ様dooも、魁に並んで受け答え。
「鬼人も往往にして、綿密とか精密とか緻密とか、密めいたことなんて料簡にない
の。鬼人が鎧を拵えられたのなら、それは偶偶、人族でも筋金入りの職人にでも、
叩き込まれただけでしょ」
「‥‥そっか、いるんだな人族の甲冑師が既に?」
「当然なんだけど~。ワタシたちと同じ人素族も、少なくはない人数でね」




