004-10
正論返しのつもりで言った魁だが、dooはdooで小耳も貸そうとはしない。
「そもそも~、魁が何のためにチート使いになりたいのかっていう、大前提が問題
になってくるでしょ?」
「大前提が問題って何だよ?」
「論なく、カッコよさげ~だからとか、異世界モノのお約束だからとか、稚拙極ま
りない発想じゃないでしょうねぇ、もしや?」
「‥‥大前提として君臨なんて発想はないねっ、オレは安心して暮らしたいだけ。
スグに強くはなれないし、鍛えたってここじゃ高が知れてるしっ」
「チートが使えることで、安心感を手に入れたいと言う発想なわけぇ?」
「そうさブッチャケ。素のオレじゃ、ヤバいこと全部doo頼みにして見てるしか
ない、そんなのは死ぬよりキツいっての。それだけだってマジガチで」
「まぁ悪くないカンジね。しょうがないわぁ、魁だもん。思いは明王斬りにも伝わ
ったでしょ、ではではチート剣士になれるか否か、いざお試しあ~れ」
dooはまたも一歩動いて立ち位置を元に戻すと、両手を海へ突き伸ばしたひろ
めかせで魁を促す。
「ったく。その、オレの癪にギリ障る小ナマイキさも段取りの内なのかよ? イチ
イチ誘くような真似しなくたって、信じるとしたらdoo以外にいやしないっての
にさ」
「アラそうだったのぉ? 生粋の小粋とでも言いなおしてくれたら、信じてあげち
ゃってもいいんだけど~」
「‥‥もういい。空振ったらdooが詰りだす前にグレ果てて、大笑いなんかして
られなくするだけだっ」
半ば自棄クソで度胸を据えた魁は、dooがひらひら差し招く手な先へ、歩武堂
堂と行き至る。
そして明王斬りの長柄をバットを握るようにして立てかまえ、一度、大上段に振
りかぶっての袈裟斬りに出る身ぶりを見せた魁だが、違和感から小首を傾げて、瞬
息の小思案に‥‥。
そののち、海へ向けた渾身のダウンスイングよる薙ぎ伏せを決行――。
まさに一転瞬のこと。
明王斬りの切っ先を、低く草生す地面から露出する岩に、打ち付けないようにと
意識を注いでいた魁なので、認識するまでに寸秒かかってしまったものの、もはや
目の前に広闊とした海はない。
うって変わって、大きな岩ばかりが立て群めかし、ゴツゴツと積み上がってでき
た磯端が迫りつめていた。
そよと吹きぬけた風からも、今までとは違う、潮の香り以外のニオイが強く嗅ぎ
取れて、魁は身を竦ませながら、ギグギクとdooを見返る‥‥。
「ネッ、できたでしょ。これでワタシを一抹の疑いもなく、全面的に妄信したくな
っちゃったかしら~?」




