004-02
浮かべてしまっていたムッと顔を、魁は神速で雲散霧消させ、完全な受け流しを
完了するべく、話の仕切りなおしにもとりかかる。
「で、何くれとなく目についたんだから、数はいるはずだけど、この町の傭兵連中
は、一体何を相手に警戒してるんだよ?」
魁が転じた話にも、dooは欣快の至りのまま歓笑で受け答え。
「物品や腕の良い職人を奪おうと狙って来る敵勢も、魔族や鬼族のはぐれ者たちよ
り、人族の盗賊や海賊を装った近隣国の軍兵が中心みたい」
「‥‥一筋縄ではいかないってことか、異だろうが世界ってのは‥‥」
「いざ襲撃を受けても、積み荷と乗客に損害を出すわけにいかない、運搬に携わる
魔族や鬼族が、マジガチで応戦するんでしょうから、傭兵稼業と言っても、ここで
はほかより気楽なのかも~」
「ったく。気楽に言われようが傭兵は傭兵、命を売ってるヤバすぎ商売に変わりは
ないだろ」
「ウンウン。その認識は大事よねっ、忘れちゃダメだから絶対~」
dooは魁へと言うより、自分へ再認識させるような口ぶり。ゆえに魁も聞き置
きに留めるまで。
「それはそうと、満潮までどれくらい待たなくちゃならないんだ? その前に、仕
事をしに行く人族なら、無一文でも船に乗せてくれるのか鬼族は?」
魁は、東西へと視線をふり向けながら言う。
潮位が充分高くならなければ、こんな岸壁に繋船はムリ。
近辺の海上にも、接岸待ちで留まる船の影は見当たらない。
魁たちが立つ背後や横には、荷車と、人力で巻き上げる丸太を組んだ造りのクレ
ーン数台が放置されている。
それらから、ここの文明レヴェルを推測すれば、潮の干満に合わせて精到に計算
された運航をしているとは、魁にはとても考えられなかった。
「そんなの待っていたら日が暮れちゃうぅ、今では船を出しているのも人族側だそ
うだし。鬼相手なら、力ずくで乗り込むこともできたでしょうけど~」
「‥‥まさか、泳ぐとか言わないよな? ここから、その鬼の大陸が見えないって
ことは、少なくとも、四キロは離れてると考えとくべきだろ?」
「ンン~、何を心配しているわけ? 魁はスイミングスクールにも通っていたし、
得意だったはずだけど、忘れちゃったの泳ぎ方?」
「泳ぎきれない距離じゃなくたって、異世界の海じゃ、どんな海獣がウジャラケて
いやがるかしれないってのっ」
「早くもナメだしてくれちゃているぅ。ワタシが、そんなムチャを言うわけがない
でしょ。第一ワタシは、泳ぎ方なんて知らないもん」
「じゃぁマジガチにどうすんだよ? 必死こいて町を駆けぬけて来た意味がないじ
ゃないかっ」




