004-01
ロンイェールビが人族にとって北限の地にあることは、町はずれまで来れば、魁
にも一目瞭然となる。
強大な爪で底深く掻き抉られまくったとしか思えない、柱状節理の断崖絶壁が隔
てる先には、荒海が青黒く広がっており、晴れあがった蒼空も、黒灰色へのグラデ
ーションで天霧っていく鬼哭啾啾なほど不気味な眺めとなり果てて、魁を拒み阻ん
でいた。
この崖岸からは、魔族の移動手段を利用して、魔王ケフェウスが統治する群島海
域へ飛ぶか? 凄まじい潮差で海面が絶壁の大半を沈めてしまう満潮を待って、船
で鬼族の勢力圏の一つであるイズドーズ大陸へ向かうか?
好まざるとに関わらず、究極かつ決死の選択を突きつけられてしまう──。
飛行能力がなく力劣りもする人族が、ここまで到達してはみたものの、さらなる
北上に挑むべきか長長と足踏みをする内に、町となってしまったという経緯は、魁
もすんなり理解ができた。
さらには、人族の町ができたことで、人族の細工利きな製造品と手業を求めて、
魔族が飛来し、鬼族まで来航するようになったという、現状と前後している感が否
めない通商関係の始まりも、魁の魔族と鬼族に対する空恐ろしさを、和らげる一助
になってくれる。
「つまりね、このロンイェールビは、魔族と鬼族をお得意様にしている問屋町って
カンジなのよ」
「フ~ン。なるほどな‥‥」
「一番近い人族の一国であるポロスにとっては、商略上の要害だから、場当たり的
な発展だろうと、岬になっている岩栓の上に町が築き立てられたのが幸いして、か
なり守り易いわけ」
「確かに。満潮時にはこの北岸を、それ以外は岬の狭い付け根部分を警戒してれば
いいんだもんな」
「そ。それで町中に、鎧った連中がのっとりとブラついていたわけ」
「‥‥辺境地帯の経済特区ねぇ、ヴァージSEZってのは、こっちの言い方じゃな
く、そのまんまを、dooが英語風に言っただけだったんじゃないかよ」
「だって、魔述でそう言い換えられるんだもん。文句は、言ってみて通じなかった
らにしてよぉ」
「文句じゃなくツッコみだっての。それに、こっちの人と‥‥って言うか、そんな
話じゃなかったろが」
「こっちの人と話す勇気なんか、当分は出そうもない~、ってゲロしかけちゃった
んでしょ? と、ワタシもツッコみのお返しをしておくの」
「はん。そんなお返しは、受け取り拒否だってぇのっ」
「そんな言い返しまでされちゃったらぁ、重畳と受け取ってもらえたも同じなの。
ワタシとしても欣快の至り~」




