003-20
なので、魁は、喉まで出かかっていた言葉を呑み込むしかない。
「何? 言いたいこと言えばいいじゃないのよ」
「いや‥‥異世界に飛ばされると、単純で豪快になれるのがお約束だからさ‥‥」
「モォ~、そんな苦そうなお茶の濁し方、いつ憶えちゃったわけぇ?」
「‥‥まぁな。そもそも、何かしらの目的があって召喚された選ばれし者でなけり
ゃ、チート的パワーが付与されないのも、当然なんだし‥‥」
「だからもう、独りでムチャをしなくてもいいってことをわかってよ~]
dooの言いぐさ自体は、確かにそのとおりだと思えるものの、全てはdooの
口車に乗ることなく、dooの魔述を利用し尽くせる卓識を、持ち合わせているか
の問題になりそうだとも魁は思う。
手に余るに決まっているチカラを、doo自身が自分勝手に使うことには、抵抗
がありそうというだけでも、よしとすべきと、魁は胸算盤を弾いておくしかない。
「ま、わかろうとはしてるけどさ‥‥」
「ワタシは、魁がふりまわされないように、独りで凹まなくても済むように、ワタ
シがバキバキやボキボキを担当しているだけなのっ」
「‥‥それはそれで、何ともなぁ‥‥」
「魁だって、こんな状況にしたのが、自分じゃなくワタシだから、とりあえずで、
この町を立ち去る覚悟が固まったんじゃない?」
「って言うか、オレならこんなとんでもない規模の破壊まではしないってのっ‥‥
あのネコ職人たちは、マジに無事なのかガチで?」
「もうこの世界は、人間が人間の皮を被っていない獣だから、半端でウザ面倒な配
慮も遠慮も思慮も憂慮もしなくて済んで、千喜万悦の歓天喜地じゃなかったの?」
「それとこれとは話が別だっ、人間の皮なんか被れない獣人たちには、何の恨みも
憎しみもないって。人面獣心じゃない、真っ当な人たちの方が多いだろうし」
「と言うかぁ、これくらいのことをしなかったら、魁がいつまでもウジけて、ここ
に居座ろうとするからでしょっ」
癇に障ってしまう魁は、癪に障らずにもいられない。
結構本気で走っている真っ最中ということもあって、脇腹に、差し込みが入って
きそうな予感まで覚えてしまう。
「ウザッ‥‥そう言う話でもないだろが、ったく」
「まぁあの工房は、オーナーがあくどいから実質的半壊ってトコね。職人たちは、
商品ともども無事だから、マジで心配要らないわよ」
「‥‥そういうことまでわかるし、できるってのに、何でここまでせずに済む、オ
レの従わせ方法はわからないんだよっ?」




