003-15
「ンフフフッ、そうねそうね。ワタシたち、ただの人間だもの~」
「ったく。何を喜んでるんだか? じゃぁ鬼族のトコでの仕事はナシな。ここでた
だの人間相手に、地道に稼いでいくとしようぜ。北限の町にしては、まだ気候的に
好さげだし」
「独善者は魁の方じゃないのよぉ。ヒドい確証バイアスで、過信バイアスの権化も
いいトコだわ」
「とにかく厳しい冬がくるまでに、生活基盤を整えないと。ただの人間にはおそら
く越冬ですら至難の業だぞ。大体、選りに選って、何で北限スタートなんだよ?」
「選りに選れたらワタシだって、もっとお気楽極楽な町にするに決まっているの。
北限と言っても緯度が高いわけじゃなくて、この町より北は、人族中心の社会では
なくなるってだけよ」
「ウッソ‥‥そっちの方が、寒けしてくるよなぁ」
「それこそワタシたち人素族は弱いから、赤道寄りの地域も暑すぎちゃうぅ。魁が
好きな強炭酸系飲料なんて、ないのよこっちには~」
「当然かぁ‥‥飲んどきゃよかったなコーラ‥‥」
「それに、ここで地道な仕事となると、町を守る傭兵しかないわよ、いいのかしら
それでも?」
魁は、先ほどから通りで見かける者たちの大半が、様式はさまざまでも、胴体に
だけは堅硬そうな、プロテクトギアを装着していることに思いが寄った。
それら全員がこの町を守る傭兵ならば、いつ襲撃を受けようとも、とまれかくま
れ配置に着いて武器さえ手にとれば、迎撃にあたることができる。
そのために常時最低限を鎧うことが、防御体制の一環になっているに違いないと
考え及んだ魁は、この町からして実のところ剣呑、とりあえずでも生活の拠点に据
えるべき場所ではない、との判断が脊髄反射的な迅疾さで下る。
「‥‥いいわけないだろ傭兵なんて。って言うか、もっとこの町やこの世界のこと
がわかるよう、体系的に話してくれよ」
「エ~ッ、体系的とかムリなんだけどぉ」
「‥‥なんか、らしくないんだよな。dooならそういうトコだけ、いつもきっち
りしてるのにさっ」
「またぁ。だから、今のワタシは違うってことじゃないの。いい加減にわかったら
ぁ? トンチキのわからず屋さ~ん」
「時と場合を考慮するより、自分の都合最優先なレリゴー女子のフリまでして愉し
むなよ。まずは、そうやって愉しめてる、余裕の根拠を話せっての」
「魁こそ、ワタシの言うことを聞き入れきれないんでしょ。自分の都合で話を取っ
散らかしているのも、魁だもん」
「‥‥かもだけど、当然だろそんなのはっ」




