003-14
「けどそれによればぁ、どうやら蜷源の家筋には、鬼魅を怖じ惑わすほどの豪傑が
生まれつくみたいで。それが嫡流関係なく、代代家督を継いできたそうだしぃ」
魁の脳裏には一瞬、桃太郎もしくは金太郎をJK化させたような、よく言えばフ
レンドリーで、悪く言えばガサツな女子の顔がよぎった。
けれども、それが誰かを認識できた途端に、そんな女子を、どうして知っている
のかなど、もっと重要そうな記憶が、どんどん意識の底へ沈んでいってしまう。
「ン~‥‥よくわからないけど、その方がいいや。とにかくオレにも関係なく、や
っぱお伽話だな」
「モォ~、説明し甲斐も何も、あったもんじゃないんだからぁ」
「けどまぁ、とりあえずこの模造刀って言うか、木刀ならぬ鉄刀とでも呼ぶべきア
イテムは借りとくって、ありがたく」
「アラァ、いきなり妙に素直なの~」
「加えてdooには、ここで約束もしといてもらう」
「何ぃ? 別にどこでだっていつだって、全然かまわないんだけど~」
「オレが逃げろと言ったら、絶対に全力ダッシュで逃げるようにっ。逃げきれそう
じゃなくてもだ、オレより先にやられなけりゃ、それでいいから」
「ンン~? それって意味があるのぉ?」
「オレが先にくたばっちまえば、dooが悲惨な目に遭うのを見なくて済むし、一
応は、自分以外の者を守るために闘ったことになるだろ?」
「‥‥なって、どうなるわけぇ?」
「いつかあの世で出交わせたら、少なくとも、祖父ちゃんだけは褒めてくれるだろ
うし」
dooは不服そうな面持ちを、小首を左右に傾げながら莞然とした嬉し顔へと変
えていく。
「ン~‥‥まぁいいわ。一応ワタシを一人の女子と認めて、ワタシのために命を懸
けて、闘ってくれちゃうってことだからぁ」
「ったく。ホント自分に都合好く解釈しやがって、わかってんのかマジガチにっ」
「絶対に全力ダッシュねっ、約束はしておいてあげるぅ」
「是でも理でも非も嘘本もなく、否が応にも問答無用で絶対だからなっ」
「ハイハイ、絶対ね~」
「異世界転移をナメんなよ。視界のどこにもメニューアイコンすらない、ここは、
やり込んだゲームであげたポイントやレヴェルがそのまま通用しちまうような、所
謂チートパワーを発揮できる都合の好い異世界じゃないんだ」
「だからぁ?」
「オーガはオーガだし、獣人も獣人で、オレたち素の人間が敵う道理なんか、あり
ゃしないぞマジガチで」
魁が足の運びだけでなく、肩が落ちかけている姿勢から重重しくなるのに対し、
dooは足どり軽いスキップ気味の歩みぶり。




