003-11
魁は、先ほど遭遇した胴丸を身に着けたオーガから、今ようやくピンときた思い
当てで話を戻した。
「まぁっ、アタリ~。だって魁の腕前が活かせるもん。鎧兜の威し立ちは、蜷源武
昌の時代以前から続いている蜷威家の世業でしょ」
「‥‥そうだけどさ、まぁ‥‥」
「魁はそもそも後継者になると言い張って、お祖父さんの家に住みつけたんだし、
マジメに手伝ってきたから、ガッコをサボりまくっても、毎度同じ説教を受ける程
度で許されてきたんじゃないのよ」
「やっぱりオレに、デジタルストーキングを仕掛けてたんだなっ」
「エ~ッ、せめてストーカー紛いのハッキングとか、ボカして言ってぇ」
「ボカせてね~しっ」
「だぁって、ワタシにはそれくらいしかできなかったけど、魁がネットにつながら
ないから、直接的にはムリだったしぃ、その程度の情報は楽楽入ってきたもん」
「楽楽かよ。まいるよなぁマジガチに‥‥」
「特にお祖父さんが〈威し立ちの技術と伝統的機能美を、学術的な研究の対象なん
ぞにし腐ってるおまえより、魁はずっと見込みがあるぞ〉って喜びメールを、たび
たび魁のお父さんへリプしていたし」
「祖母ちゃんじゃなく祖父ちゃんがか? って言うかメールの盗み見だって立派な
犯罪だろが。それを毎度毎度、楽楽やられちゃ堪ったもんじゃないっての‥‥」
「フッフ~ン。バレなければ犯罪じゃないもん、魁だって察していたクセに、ワタ
シへ拒止を訴えようともしなかったじゃなぁい」
「何がフッフ~ンだっ。するもんかよ、わざわざオレからなんて」
「それは黙認も一緒なの、元のでもここでも全世界共通でね~。そもそも破壊魔寸
前だった魁に、言える義理があるのかしらぁ」
「チッ‥‥義理はなくとも、人情はあるってのっ」
「まったく、やっぱり癖づけちゃってるっ、舌打ちなんかモォ~」
「‥‥dooって、そういうトコを自分の都合で楽楽スッ飛ばしてくれるよなっ、
昔から。でもって、ごまかすために、オレのことはトンチキのわからず屋とか喚き
立ててさ」
「モォモォ~。きっぱりとやめにしたのにぃ、昔のことをぶり返しちゃうトンチキ
のわからず屋なんだからっ」
「それだそれっ。人情的に、料簡違いも甚だしいレリゴー気質――あれっ? 今な
んか思い出しかけたのに‥‥何だったんだろ? 肝心なことに思えるんだけど」
再びピンとくるのを迎え待つように、上目づかいでキョロつく魁だが、思い出し
たい事柄は、どんどん意識の底へと、沈降してしまうことだけがはっきりわかる。




