002-27
「何よぉ、妙にあらたまっちゃって、一つとかも~。条件なんて幾つでも呑んじゃ
うし、何だって丸呑みゴックンなのっ」
「だからな、そうやって、今のオレをナメないでくれ」
「ナメていないもん。ペロリアン(規格外個体)同士、ワタシなりの最適化とでも
思ってちょうだいよ~」
「dooの判断が、独り善がりじゃないってことは承知してるさ。だから、勝手に
オレを助けようとすんな。頼んだ時に頼んだことだけ助けてくれたら、それで充分
だって」
「‥‥充分かしらホントに~?」
「昔みたく過干渉気味な過保護にしやがったら、dooも女子ザルボスの一人と見
なして、完全に冷顔スルーだからなっ」
「わかっているわよモォ~。魁も今のワタシをペロリンしないでっ。じゃあいいの
ね? いいってことでいいんでしょ?」
「‥‥ああ、まぁいいって」
「キャ~、嬉し! これで本人の許諾登録完了。ではではネクスト・フェイズ、ア
・ホール・ニュー・ワールドへと移行しちゃうわねっ」
「って、何だよそれいきなり? オレを騙してないだろなっ」
「ないない~。それではぁ、サブミット・ユア・コンヴァージョン!」
dooの意味不明な呼号が、エレヴェーター前の一隅に響き渡りきる前に、魁が
握る力を強めてしまうスマホの画面が、ふっつり、暗然と、dooの姿を吸い消し
た──。
それから、ウンともスンとも言わないスマホを、振ってみようが画面を何度も指
先で弾いてみようが、やはりウンともスンとも言いださない。
魁はそこはかとなく、一抹の不安を禁じ得ないものの、自分自身に何の異変も感
じられないことが、却って不安の消散を妨げる‥‥。
ところが、黒いスマホ画面を、困惑とやにむに湧き上がるムカつきが籠る視線で
穿ち続けている内に、魁は得体の知れない不吉さにも襲われ始めた。
そのせいか、上眼瞼挙筋もヒクヒクッと痙攣しだして、魁の視界にブレと回転が
加わっていく。
次第に、はっきりと目眩めいていく自分に、魁は、無性に焦りを覚えずにはいら
れなくなってくる――。




