002-26
「何だよ大げさな。昔っから、思いっきりオレの上からだろが」
「今ここで魁がいいって言ってくれたら、アプリでの役目なんか即刻ポイなのっ、
ワタシは魁のためだけにガンバるんだもん」
「‥‥即刻ポイだぁ? 嘘クサ~。ムリだろがそんなの」
「どうしてよぉ。ウソじゃないもんっ」
「ポイしたらPAシステムに支障が出て、何千万ものユーザーが、突然ボッチにな
り果てて大混乱じゃないのか? 通信障害と同レヴェルのクレーム台風の余波が、
真秀良准教授にまで襲来するぞきっと」
「ドーでもいいもんそんなことこそ。ワタシがポイしたって、ワタシのコアはちゃ
んと同期されているし、バックアップの最新ヴァージョンで復元すれば、事足りち
ゃうわっ」
「ん~、マジガチでか? ま、これまでボッチでボチボチとやってきたオレには、
どうでもいいんだけどさ」
「じゃぁマジガチかどうか、試しに言ってみたらどう? 言いなさいよどうでもい
いのなら、また傍で魁の助けになっていいって。ネェ、いいって言ってよ魁、一言
マジガチで~」
dooはさらなる顔面ドアップで、魁へ迫り詰めかかる。
「‥‥調子狂うなぁ、間違いなくdooなのに。なんか、ガキの頃よりガキっぽさ
をカンジるって言うか、マジで御無沙汰だった幼馴染みが、突然昔とはビミョ~に
ズレた調子で、押しかけて来たみたいって言うか‥‥」
「だから何よぉ」
「‥‥何より、想定外どころか、想像を絶するくらい下手に出られて、それまた、
悪い気がしないってのが、どうにもさぁ」
「人間ぽく、円くなったとでも言ってちょうだいよ。そこはむしろワタシだって、
よりきっちり清濁併せ呑めるくらい、成長したんだと認めちゃえばいいのっ」
「‥‥ん。まぁ、なるほどだけど‥‥」
「まぁじゃないでしょ。この短い時間で魁は、ワタシにペラペラと六年と七二日間
の残酷物語の触りをブチまけて、随分とスッキリした表情になっているの」
「‥‥‥‥」
魁のスマホを持たない右手は、思わず魁の右頬から顎を撫でていた。
「いつでも気兼ねなく話せるだけでも、魁の損にはならないし、絶っ対に魁にはワ
タシが必要なの。本音で話せる相手なんて、スグにはつくれないんだから。加えて
ワタシは本音を聞くプロフェッショナルだし~」
「‥‥まぁ、いや、そうなんだろうなぁ」
「まぁもいやもなく、そうなのっ」
半ば甘えからの強要であることが明白なdooに、魁は表情を引き締めて、端正
甚だしき真顔で答える。
「ん~おそらくは、な。でもそこで、やっぱり一つ、条件があるな」




