002-20
「ガマンせずに言いたいことを喚いて、暴れまくってたからなっ、全力で」
「魁が全力でぇ? そんなことガチでしちゃっていたら、ワタシの推度だと今日今
ここで、魁と会えていないはずなんだけど~」
「ま、誰一人、ケガはさせてないからな」
「エ‥‥そうなの? それはワタシの想定外、スッゴ~い」
dooのこのリアクションは、魁にとっても想定外。
魁の意識の片隅で、デフコンレヴェルに調整が入りだす‥‥。
「でもガッコをサボらずに、毎日空き家の塀とか壁とかブッ崩し続けたら、ボコり
待ちする奴ら自体が罪因だってことをド忘れて、オレを通報しないとも限らないわ
けだし」
「ウ~ン‥‥恐怖回避の合理化、自己防衛のための正当化、身体不可侵権および移
動の自由権を失わないための、サヴァイヴァル・ストラテジーってトコかしらぁ」
「しらんけど、ケーサツ沙汰は、さすがに祖父ちゃん祖母ちゃんが、心労で寝込ん
じまうだろが」
「そう‥‥なんだかわからなくなっちゃったわ。ワタシがついていた方がよかった
のか、ついていなかったからよかったのか‥‥」
「さぁな。でも、人間力学のややこしさは身に沁みたって」
「フーン‥‥例えばぁ?」
「男子でも女子でも、仲間内で幅を利かせたい奴は、物凄く自意識過剰でさ。毛色
の違うサルが入って来ると、気になって仕方ないのに、素直にも全然ならなくてさ
ぁ。どんどんヤバくなるんだって」
「そのヤバさって、どんな?」
なんとなく、dooから喰いつきのよさが感じられてならないものの、警戒心以
上に、話してしまいたい欲求の方が、魁には高まってしまっていた。
「‥‥とにかく遠まわしでさ。仲間を使って囲い込もうとするわ、絡め手で主導権
を握りたがるわ、ホント迷惑至極なんだよなっ」
「ウン。そのとおりね‥‥」
「さらにさまざまな嫉妬心が絡んでくると、一層こんがらがっちまう。サル山は一
つじゃないし、各サル山のボスザル同士から、ややこしいバランスで牽制し合って
るんだよな」
「‥‥それはどう言うカンジなの?」
「オレを気にするボスザルが男子だった場合は、自分の権勢を知らしめるためなの
か、仲間内の女子の興味が、オレに向くかもと焦って、チョッカイをかけてきやが
る」
「サル山のボスが、女子だった場合は?」
「オレがどんな奴か興味をもったけど、山での地位を保つために、まずフツウには
近づいて来ない。自分が近づかないんだからと、ほかの女子がフツウに近づくこと
も許さないから困るんだ」




