002-19
「ホント、どこも救い難いポンコツスパイラルだっての‥‥」
「そうよぉ。魁までそんな鬼ポンコツにしないためにも、ワタシの甲斐甲斐しさが
不可欠なの」
「‥‥本題オチかよ。ったく」
とは呆れ気味に言う魁だが、内心では妙に御満悦。
「またって言うか、今度は口先だけじゃなくリアルに魁のスグ傍で、全身全霊で守
らせてちょうだいよっ。それがワタシのお願い~」
「それが? ‥‥ウソ吐けっての」
「本当よ。今日の今ここまで押しかけて来た目的なの、マジもガチで。ねっ、いい
でしょ? 私だって帰らないんだから、頑としてっ」
「‥‥って言うかdoo、今ピンときちまったけど、こっちへ来られない母さんの
ために、オレにピッタリ張りつこうとしてるんじゃないの? そうなんだろマジガ
チで?」
「ヒッド~い! 何よそれぇ」
「真秀良准教授まで巻き込んでるなら、全部ストンと腑に落とせるしな、この特別
製のスマホからして」
「そんなわけないでしょっ、むしろワタシはキキを裏切って来ているんだからぁ」
「どうだかなぁ‥‥」
「何千万人と五年間も対話する内に、dooという自我を自己認識して、エゴ・イ
デアル(理想的自己)の確立に至ったワタシはもう、PAアプリの基幹AGIシス
テムじゃないんだもんっ」
dooは全身が映るズームバックをして、これまたお得意だった、両手を腰に当
ててのアキンボーポーズで魁へ訴えた。
「‥‥自我を自己認識したって? 自我の目覚めってヤツ?」
「そ。そお言うこと~」
「じゃぁdoo、世界のAI評論家連中が予言したとおり、有機生命体同様の能動
的に勘考や感思ができる意識ってのを、もっちまったわけなのかよ?」
「調べたんじゃないのよやっぱりぃ。ワタシのことをよく知ろうとしちゃって魁っ
たらぁ。ガッコは、チョットでも嫌な目に遭ったら、スグに何日もサボっていたク
セに~」
つい滑らせてしまった口を、口惜しげに噤む魁だった。
「フン‥‥スグにサボることで、今日までどうにかやってこれたんだっ。こっちで
幅を利かせてる奴らは、東京より露骨で、他所者は迷いザルも同然だしっ」
「キャハッ、迷いザルね~」
「笑い事じゃないんだってのっ。毎日何かしら、持ち物を隠されたりパクられたり
捨てられたり、逆に、ゴミを机やロッカーにつめられたりさぁ」
「安易なベタ化へとまっしぐらねぇ」
「ボコり待ちされたら堪ったもんじゃない。通学路には空き家ばっかで、人通りが
ないことの方が多いんだから」
「そこまでだったなんて‥‥よくやってこれたわね、そんなで。逆に感心しちゃう
んだけど~」
dooは、腕組みまでして深く頷く。




