002-16
それでも超美女子は中庭を見下ろしたまま、魁を横目づかいにしようとさえしな
い。
魁も、怯じることなく、策案の実行に入ることができた。
「てなわけで、出オチみたいにさせて悪いけど、話はdooからじっくり聞かせて
もらうんで。あなたの出番は、ここまでで結構ですから」
スマホと通学バックそれぞれを左右の手で引っ掴み、魁は、超美女子へ軽くお辞
儀をしながら言い継ぐ。
けれども尚、超美女子は「‥‥‥‥」
身動ぎもしないその様は、魁には恰も、dooという驕逸なゴーストが置き去り
にする全身義体に思えてくる。
「‥‥このスマホは、ちゃんとdooの言うとおりにするから心配要りません。よ
ければそのコーラ、まだ口をつけてなくてギリ飲み頃でもあるんで、一服入れてか
ら気をつけて帰ってください。んじゃ」
そう一方的に告げ終えたあとは早却、一目散の全力ダッシュでこの場から離脱す
るのみ。
魁は、足音を毫釐もたてず、人の目にも立たないハヤテのごとく、超美女子をも
ふり捨てで、空中カフェから姿を掻い消した──。
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西棟の最西端も、最上階に位置するエレヴェーター前まで駆けぬけた魁は、嫌な
汗をじゅんわ~りと、変なかき方までするハメになっていた。
ここまでの途中、電源をオフしようとボタンを押しても全くダメ、画面にタップ
やフリックをしようがどうにもならずで、スマホはそのまま、シャツブルゾンのポ
ケットへ突っ込んでいたのだが‥‥。
どこまで逃げれば気が済むのかと喚きだしたdooの音声は、どんどん大きくな
るばかりで抑えきれそうもない。
周囲をささっと見まわしてから立ち止まった魁は、ポケットからとり出した喧し
いスマホへ叱りつける。
「もういい加減、静かにしてくれdooッ。もうそろそろ人がいない所を探すのが
大変になるんだっての。話はちゃんと聞くって言ったろがっ」
──肩透かしなまでの想定外にも、それで一旦dooを黙らせることに成功。
その上、ポケットへ突っ込むまでと異なり、スマホ画面には、dooが顔を現出
させていた‥‥。
超美少女の面差しそのままにもかかわらず、画面の中でムカつきを露わにするそ
の表情は、昔どおりのdooという、スグには調整しきれないズレに、戸惑いを覚
えてしまう魁ではある。
が、昔は昔で超美少女にモデリングされていただけであって、魁の幼さが、それ
を認識させなかったにすぎないことに思い至ると、さらにその先、dooのキャラ
クターデザインは創造されたのではなく、実在するモデルがいたということ。




