002-15
けれども、彼女の身長は、魁より一〇センチは低い一六五程度。
蜷源るりの、武張りを感じさせる骨太さを目に焼きつけられたあとでは、繊柔で
華奢にしか見えない体格‥‥。
どう見積もっても、複数人から難癖をつけれようが、手出しされるより先に自分
一人で暴れ狂い、周囲の壊滅的器物損壊によって、暴力沙汰を回避しおおせるだけ
のフィジカルストレングスを、煢煢に怏怏と鍛えあげてきた魁には、やはり、do
oの十八番であったハッタリとしか思えない。
「フンッ。しょうがないだろが、教材タブレットからして自腹がきれなくなるくら
い、修理しても買い替えてもスグにバッキバキにされちまうオレは、授業ですらス
タンドアローンだったんだしっ」
「でも~、それは託ちぐさでしょどうせ。そうそう何度も高額出費なんて、お願い
できないというのをいいことにしてぇ」
‥‥dooに図星の端を鋭く指されて、魁は反射的に負け惜しみを口走りそうに
なる。
実のところ、dooからアクセスされたくないがため、配布直後からタブレット
が壊され続けた嫌がらせに便乗し、自分でも疑われないように壊して、修理に出そ
うとすらせずにいた。
だがしかし、ここで一〇歳の頃みたく口減らずな態度に出るという、オトナ気な
い真似はどうであれ差し控えておくべき。
dooと、これ以上見苦しい小競り合いを繰り広げることは、独り雑談で魁に認
知負荷をかけてくれていたほかの客たちへ、認知負荷の倍返しをしてしまう。
自分の狭い肩身を、さらに狭める愚行でしかない。
なので、魁はとりあえずdooとの話は続づけつつ、超美女子からはとにかく離
れておくという、苦肉の策をとることに決めた。
幾分冷静さを取り戻せた魁は、声も幾分低めてきり返しに出る。
「で? 悪戯れた前口上はさておき、マジでどう言う料簡なんだよdoo」
「ンンン? どう言うこといきなりぃ。別に悪戯れてなんかいないし、今までのは
前口上でもなければ、料簡も全然ないんだけど~」
「嘘こけっ。第一どして来たのが今日の今なんだよ? dooならこれくらいのド
ッキリ、もっと前に仕掛けられたに決まってら」
「キャ~、じゃぁ成功しちゃったぁ?」
「ザケんなっての、ったく‥‥」
「フザケてなんかいないもん、至ってマジガチよワタシは」
「とにかく、何か用があるってわけなんだろっ。頼めそうな相手が、オレくらしか
いなかった邪気乱なことが?」
「ウ~ン、その質問には二通りの答え方があるんだけど、魁は、長くなっちゃう方
を聞く気になってくれたわけだからぁ、ワタシも素直に喜んでおかなくちゃね~。
魁もそれなりにオトナになったんじゃなぁい?」
魁はしめしめと頷き、かたらかに腰を上げる──。




