002-10
さらに魁の脳裏は、否応なく、呪わしき思いをよぎらせていく。
‥‥何でオレは、ああした愉しげな輪に入れないのか?
‥‥いや、輪に入ることはできても、オレが入るとあんな愉しげにはならない。
‥‥違うな。入ったその時点では愉しく過ごせても、次の機会にはもう、どこか
が違っちまう。
‥‥なんだかシラけた隔てがましい空気感になる理由は、輪を構成していたメン
バーに、不自然すぎる入れ代わりや、加入が起こるせいなんだ。
‥‥それで輪自体が歪んで、円みが損なわれるか、つながりが断絶して輪でなく
なっちまう。そこに愉しさなんか、生まれる道理がないってのっ。
‥‥断じて、オレに非なんかあるもんか!
‥‥どう考えたって悪いのは、ヤカラ化する気配プンプンの、まともな女子たち
を追い払ってまで、入れ代わった女子どもだよなっ。
‥‥それと、まともな女子とオレの間に立ちはだかろうと加わった男子どもで、
それにシラけて、ほかのメンバーたちも隔てがましさを醸し出すんだよなぁ。
‥‥だけど、そうなる理由には得心がいかないながら、オレが原因とカンジられ
れば、そこから離れるべきはオレになる‥‥。
歪み軋みがありありと見て取れるそこに、居続けられるわけがない‥‥。
結局、人の輪には入れないし、入れたというのも、単なるのオレの思い違いでし
かなくて、一度たりともは入れちゃいなかったに違いないんだよなぁ‥‥。
晴れあがった空の青さに、灰色が滲みだして見えてくる。
意識にも排気ガス臭さが立ち込めてきて、魁の殺伐としたイメージの象徴である
超高層ビルが、何棟も、脳を内側から突き破ろうと意識の奥から顔を出してくる。
舌には、赤錆が振り掛けられた、給食の揚げパンの甘苦さまでが広がりだす。
いつまで経っても慣れてしまうことなどできない、なんとも言えない胸クソ悪さ
が、いつものように魁を苛んでいく──。
結局のところ、人の輪なんかに入っちゃダメなんだってオレは‥‥。
祖母ちゃんと祖父ちゃんに心配をかけたら、鬼モンスター化して、誰彼かまわず
理非曲直を糺し尽くしちまう。
何よりは、オレのためにそうなることが耐え難いぃ‥‥。
と、これまで何度思い返したかしれない怨望を、あまりの不快感からきりあげた
魁は、ガマンの限界ながらコーラのカップを一掴みして、ガマン、さらにガマンを
続ける。
まだ、目指す冷たさに足りていない、わかりきっていたリアルな幻滅に、ヴァー
チャルな不快感を弾き散らされたそのあとは、独りヘコむ以外、魁にはできること
がなくなってしまう。
深い溜め息まじりに低く唸りつつ、魁はカウンターへと突っ伏した。




