002-09
PAと絶えずつながっているユーザー同士ならば、互いにPAの指示に従うだけ
で、一抹の不安もなく円滑なコミュニケーションが図れてしまうことから、昨今は
PA依存論議が白熱しているほどだった。
けれども、PAは宿題やテストの答えを教えるなどの不正は一切せず、単にかつ
ては家族や身近な人が自然にやっていた常識教育、人として身につけるべき当然の
礼儀作法と行動様式を、その都度シーンに合わせて、ユーザーに響く言葉と口調で
教導するのみ。
なので、そんな正道をムリなく導誘するPAへの依存は、果たして問題か?
こうした依存的利用に、どんな問題があるのか?
そもそもが、依存と捉えることこそ問題ではないか?
といった、普及してしまう前に煮詰めておくべき、歴然たる手遅れが問題であっ
て、ユーザーである一般人にはどうでもいい、コンニャク問答の様相を呈している
のが実情と言える。
AI技術に疎く、開発者の若さを根拠に不信感を払拭しきれずにいる、各分野の
重鎮たちの難癖づけにすぎない、との意識がより早く、魁たちの世代を中心に蔓延
しきっているのも事実だった。
この空中カフェも、ANI(特化型人工知能)による管理で、店員はいない。
提供メニューの補充や清掃など、あらゆる手間が最少となるタイミングで、担当
職員に伝わるという運営がされている。
よって当然、水一杯からセルフサーヴィス。
魁は、ここのような無人化カフェの常連ではないので、幾分たどたどしさを見せ
ながら氷入りコーラを入手する。
支払いも、ICチップ内蔵の生徒証でキャッシュレス決済だが、引き落としに自
分の口座を登録していても、逐次保護者のスマホへ利用明細が通知されている。
そのため、この時間にコーラなんぞを、それも自販機購入ではないことは、祖母
さんに間違いなく気に留められてしまう。
これまで、魁が、強行突破の一点張りでやり過ごしてきたゴタゴタの数数から、
何事も悪推量しがちな祖母さんに、どうごまかそうかと考えを巡らせながら、先客
たちからしっかりと距離のあるカウンター席に着く。
スグにコーラを一気飲みしてしまいたい衝動を押しコロし、クサつきがぶり返し
だす意識を窓の外へとヒン向けた魁は、ちょうど視界に入ったスポーツクライミン
グ部の男女合同朝練風景で、コーラが充分冷えきるまでを心待つことにする。
がしかし、中庭をはさんで四〇メートルほど離れた全日制総合科の南棟、2号館
校舎のピロティーに設けられた、ボルダリングウォール前で浮き立っているのは、
真剣さなど窺えない部員たちのキャッキャとした笑顔と、和気藹藹ムード。
それは、魁を一層クサクサさせていくだけだった。




