002-07
蜷源るりへも、集音マイクまでは設置されていないのをいいことに、魁はやや声
高に応じる。
「何がいきなりだ! オレは、自分本位が酷すぎて壊れてる奴なんかと関わる気は
一切ない。しつこいと警備室へ駆け込んで、ケーサツ沙汰にしてやるぞっ」
「‥‥チョットォ、ヒドくない!?」
「ここは、あんたが通ってるような安閑・放恣と壊れ合ってられるガッコじゃない
んだ。その辺にまず気づけない、自分の無様さを思い知れってんだ、このブリック
・ア・ブラックがっ」
「何だってのよそれぇ?」
「つまりは話してもムダ。そんなあんたらの自覚も悪気もないときてる邪毒に、チ
クリチクリ壊されまくった、完全なガラクタだからなオレもっ」
「てか、意味わかんないんだけど全然っ」
「はんっ。会話が一応成立してるからって、意思の疎通までできてると、思いあが
ってんじゃねぇっての!」
「‥‥‥‥」
意外ながら、早くも言葉を失ってくれた上に、教室を出た所から追い縋っても来
ない蜷源るりに、魁は一撃離脱の戦略的撤退が成功と推断。
デフコンレヴェルを一段下げるとともに、思わずボソと独り言つ。
「‥‥ったく、あんなのが、県内一の名家に生まれて育ったトップ校の最上級生か
よ。もうこの国自体が、立てなおしようもなく堕壊しちまってるよなっ」
現下、魁の脳内で湧き上がる黝糾女学寮高生のイメージは、どれも蜷源るりの見
るからに健康優良・心身頑丈な骨太中背フォルムをした女子制服姿の、高性能な一
方で、致命的ポンコツをかかえる戦闘ロボットどもだった。
お行儀よく、じっと整列でもしてくれていればいいのに、獅子搏兎の冷厳さでも
って、一糸乱れぬ連携口撃を繰り散らかしてくれる、最凶のスウォーム的存在。
また将来、その全機がバリバリとあちこちの要職に就くわ、各分野で権力を握る
者の嫁となって次世代機を産み出すわ、それらをまた培った自分本位な必勝法で育
てあげては、華華しくローンチ・アウトしてくれるわで、連綿と続くであろうポン
コツスパイラルまで思い渡した魁は、やるせなさだけでなく吐き気も催してきてし
まう。
──目の前に、東京の自宅マンションから見えていた灰色がかった空が広がり、
排気ガス臭い超高層ビルが、意識をメキメキッと突き破っていく感覚にも陥ってく
る。
‥‥きなこ砂糖に赤錆が混ぜ込まれた、給食の揚げパンの味までしてきて、舌が
痺れを訴えだす‥‥。
自分を壊す人間の言動が生じさせる感覚的条件反射とも言えそうな、このサイテ
ーな胸クソ悪さ。
缶入り無糖や紙コップに注がれるインスタントのコーヒーなんかでは、まるで晴
れる気がしない。




