002ー05
「じゃぁ、お昼にお弁当とか、どこで食べるわけ?」
「弁当でも、食堂かカフェのどこかです」
「ヘェ~、そうなんだぁ‥‥やっぱ、チョット違うってわけね」
「ここって全日制の総合科もあるだけじゃなく、県の研修センターとか教育関係の
分室とか、新設機関とかも集められてるんで、飲み喰いできる場所はあちこちにあ
る代わりに、そこ以外は一切ダメときてまして」
「マジで~?」
「えぇ、マジガチです。ゴミ箱もある場所が決まってて、出したゴミは、自分で持
ち帰るのが校則にもなってるんですよね」
「県立にしては厳しいのねぇ‥‥けど、出そうとしなくたって出るでしょゴミは?
てか、掃除の時はどうするわけ? クラスのゴミを、掃除当番が持ち帰らなくちゃ
いけないとか?」
「併合制クラスに当番なんてないですって。毎日来る人数も、顔ぶれも違いますか
ら。県の施設同様、この西棟にある教室も清掃員がやってくれるんです」
「なんか贅沢ぅ。てか無料とは言え、県立だから授業料はウチの高校と同よね?
随分と得されちゃってるカンジがするんだけど~」
「一人ずつで考えると、ほとんど登校しないんだから、それくらいしてもらわない
と。逆に、体良くぼったくられてる気がしちゃいますけどね」
「ウ~ン‥‥」
蜷源るりは、納得はできないけれども、断固不容とまではいかない面持。
ウザクサくはあるが、ここは一つ、社会を齧っている者として、魁はオト
ナの対応をとっておくことにする。
「オレからすれば、蜷源さんのガッコの方が余っ程ですよ。黝女なんて全てが県下
一ときてるんでしょ? 天文台にプラネタリウム、アクアティクス総合プールやら
複合メディアセンターやら。配属される教師の質から違うんでしょうし」
「そうなのかなぁ‥‥」
表情を変えた蜷源ゆりに、口元が緩みかける魁だった。「ですって、当然」
「ン~‥‥じゃぁどうしようこれ? せっかく買って来たのにぃ」
「ま、どうにでもしちゃってください、ここで飲食する以外で」
「そのマグボトルだって、コンヴィニで買って定価に近かったし、色をお揃にした
くて、何件も探し廻っちゃったんだからぁ‥‥」
「‥‥ぁあ確かに、蜷源カラ―っぽいですもんね‥‥」
「てか、ここで一緒に飲めばいいと思って、ノドが渇いてるのガマンしてたのに、
思い出したらモォ~、カラカラってカンジなのにぃ」
そうボヤきつつも蜷源るりは、マグボトルと紙袋をトートバッグに戻しだす。
察することができたとおり、この蜷源るりが、ダッシュでこの場から逃脱してお
くべきまでの非常識人ではなかったことに、魁は内心胸をなでおろす。
「すみませんね。ここを出てから、PAに文句を言いつつ蜷源さんがたっぷり堪能
してください。とにかく誰かが来ちまう前に、話を済ませてくれませんか」
「‥‥ま、そうね。ウン、やっぱ気になるぅ?」
「その、人間クサさを色濃く出すよう最適化されてる蜷源さんの腹心PAが、どん
な経緯と理由で、オレの名前を出したのかはオレも気になるんで」




