002-04
「‥‥蜷源さんの腹心がどうマジ索ったのか知りませんが、ここのコーヒーが、ポ
ットを持参してまで買うほど好きなのは、オレの祖父さんで。このラップサンドが
好物なのも、オレの祖母さんなんですけどね」
「エェ~ッ、マジィ?」」
「オレは頼まれて登校ついでに寄ることがあるだけ、って言うか、そういうことを
索りまくるのは、プライヴァシーの侵害ってヤツになるんじゃないですかねっ?」
「そうだったの? てかコーヒーもツンブロードも嫌いとか?」
心ともなく魁は苦笑わざるを得ない。
ツンブロード呼びマウンティングか、この蜷源るりですら、フツウに使うほど浸
透していたJKローカル常識なのか? フツウから鬼ハズレしている魁には、見当
もつかない慚羞にアサルトされてしまっていた。
「‥‥いや、そう言うことじゃなくて――」
「ならよかったぁ、さぁさ飲んで食べて~。そんな不確実な情報じゃ、プライヴァ
シーも侵害もなくない? 悪く言いふらしてるわけじゃなしぃ」
「‥‥だから、あのですね‥‥」
「その辺も、私のコンちゃんのマジ加減で、PAのクセに私のコンちゃんらしくド
ジるけど、PAだから人がガチに嫌がることはしないってこと、わかってくれたら
嬉しいんだけど~」
適切なサポートを受けるためには、PAへ本心をうち明けるのが当然で、それゆ
え腹心と呼べる関係にまでなり得ることは、魁にもすんなり理解ができる。
しかしながら、自分が利用しているPAを、恰も実在する大親友のごとき口ぶり
で庇い立てる蜷源るりに、魁の当惑は瞭然たるしかな顔として定着‥‥。
そして、あきらめの溜息とともに綻び、ほぐれてはいく。
「‥‥わかりましたよ。話はとり敢えず聞きますけど、蜷源さんの悪く言うとの面
が出てますってそれ、ガサツではなく、主観が強いんでしょうね」
「‥‥どう言う意味それ? 悪く言われてるのは同じでしょうけどぉ」
「他人や周囲のことを考える前に、自分の欲求を満たすことを優先しがちな、思い
込みが強い性分じゃないか? ってことです」
「‥‥あっそ。フ~ン‥‥」
蜷源家の次代当主と言えど、やはりJKならではの読み難い御愛嬌スマイルを浮
かべる蜷川るりに、魁は目を逸らす以外にないのが口惜しい限り。
「‥‥て言うかこのガッコ、教室での飲食は禁止なんで」
「エ~ッ、そうなの?」
「コーヒーも生チョコプリンもニオイでスグにバレちまう。朝イチで担任に注意さ
れたり、その前に、クラスの連中にヒソつかれるなんて御免なんですよね」




