005-16
「ああ。この町は、鬼どもへ鬱憤を溜め込んでる人族を全員味方につけて、わだか
まりなく通りぬけてやる。来るならそのつもりで来いよな、反対するならそこにい
ろってのっ」
そうdooへ言い捨てて、魁は再びダッシュを開始──。
「わかったわよモォ~。とにかく周囲と違う色が塗ってあれば、それは、どこかの
鬼の国の印ってことだから、目にしたらしっかり警戒ねっ」
「‥‥ん、了解。‥‥どしたんだよ、急に物分かりよくなって?」
「別に~。不意打ちを受けて気絶しちゃったあとまで、明王斬りが助けてくれるか
なんて知らないんだからぁ」
「そりゃどうもっ。dooも、いつまでもナメてると、地獄まで舐めるハメになる
からなっ」
「ンン~? どう言うこと魁もまたぁ?」
「掠り傷一つでも受けてみろ、それをしやがった鬼は、絶対にドタマかち割ってブ
ッ斃すっ。でもって、オレが一生いじくじ後悔することになるんだからな。一秒た
りとも忘れんなよ!」
「‥‥ハイハイ。喜んでいいのやら思いやられるやら~で、ウザ苦しいそうだから
了解したわっ」
「んっ。冗談じゃなく絶対だからな」
「ハ~イ。じゃぁ思う存分にやりたいようにガンバって、スグに追い着くからぁ」
その言葉を最後に、dooからの一方通話がきれた状態になったのかは、何の感
覚もないので魁には判断できない。
まだ一方通話状態で、単にdooが黙ったまま聞き耳を立てているだけとも充分
考えられるため、dooにツッコみを入れるネタを与えないよう、魁も無言で息も
荒げずにひた走る──。
現れだした三叉路や十字路にも、魁は迷うことなく直路に進んで行くものの、い
い加減、鬼族とも人族とも出交わさないことに業が煮えて、走るペースもどんどん
落ちてしまう。
そして遂には意気込みまでが衰耗し、次の十字路を目前にして、魁は立ち止まら
ざるを得なくなる。
「‥‥どして、人っ子一人いないんだよマジガチに? まさか‥‥」
気にしていたdooのツッコみはなく、魁の呟き声も、たちまち闃とした辺りへ
吸収された。
ここまで同じような風景ばかりが続いていたことから、実は鬼の罠にまんまとハ
マって、同じ場所を堂堂巡りしていただけかと魁は焦ってくる。
けれども、走った分だけしっかりと、近づいているクレーターウォールの斜面北
西側との距離感を頼りに、どうにか冷静さを取り戻す。
見上げた空も、明るさ的には大して変わりがないものの、ついさっきまでのスッ
キリ晴れ渡っていた青空が嘘みたく、雲がうっすらとながらムラなくかかってしま
っていた。




