005-14
しかしその先は、少し幅広な一本道と、両側に小屋がびっしりと建ち並んでいる
だけで、鬼どころか人影すらないあり様──。
なので魁はさらにスピードを上げて、湿っているのか、乾燥しているのかが、判
断のつかない赤茶けた土の道を突き進む。
左右の小屋も、外壁が同じ赤茶けた土で塗られており、屋根は削ぎ板を並べて取
葺きにした粗末な造り。それがまた、ほとんど半壊状態で続くばかり。
魁にはなんとなく、中東や北アフリカなどの、砂漠が広がる手前辺りで発見され
た住居遺跡が思い出されて、タイムスリップまでしてしまった気分になってくる。
──そこへ、dooの声が虚を衝くように魁の右耳元で響く。
「待ちなさいよ魁っ。モォ~、段取りがまた狂っちゃうじゃなぁい」
まさかもう追い着かれるとは思っていなかった上、それに気づけなかったことに
も喫驚しつつ、反射的に右へ顔をふり向けた魁だったが──dooの姿は見当たら
ない。
なので、心ならずも魁は立ち止まり、真後ろへしっかりとふり返らざるを得なく
なる。
ところが、dooは現在も尚イプラたちと入口の前にいて、魁を、不満度と呆れ
具合の高さがはっきりとわかる、シュラッグポーズで見やっていた。
その表情までは不明瞭なdooへ大声を上げるには、やはり距離が気になり、憚
れてしまう魁は、「何なんだ今の?」と呟くに留めておくしかない。
「魔述なのこれも、便利でしょ。まぁワタシからしか使えないんだけど~、スマホ
代わりってカンジィ?」
「はぁっ? 何だよまたしても!」
「怒鳴らないでよね。幾ら遠くて大声だろうが、ちゃんと調整されて聞こえるだけ
でムダだからぁ」
「‥‥チッ。出鼻を完全に挫いてくれやがって」
「それなら大成功~。舌打ちも、ダメって何度言わせればわかるわけっ?」
「‥‥て言うか、ここまで誰かがいる気配なんて全然なかったぞ。どこまで行けば
鬼どもがいるんだよ?」
「それは~、同じようにして、イプラから聞きながら行くからぁ、待っていてよそ
こで」
「待てるもんかっての。突っ走った意味がなくなるだろ」
「知らないけどぉ、意味をなくしたいんだもんワタシは~」
「ったく。それより、あそこまでしたなら、いっそのこと捕ってあげちゃえよ、サ
カナを必要なだけ」
「エ~、そこまではどうかしらぁ?」
「海にビビってる漁師にプライドもないだろうし、人族のプライドは、オレがこれ
から死守しに行くんだしっ」
「ビビっていないイプラの、プライドと言うより心意気を、損ねちゃうでしょ~」




