005-12
dooは桟橋が延びる方、海へ向きなおって両手を突き出し、一〇本の指をうね
うね小刻みに動かし始める。
──すると岸の近くから先へと続続、さまざまなサカナが浮き上がって、海面で
跳ね躍りだした。
恰も比重の違いで押し上げられたサカナが、海中へ潜り込むことができずに、沈
鬱さを湛えたドス碧い水と空気の境界で、足掻き暴れているかのよう。
「‥‥どうなってるのあれ? ドゥーって言ったよね、あんたがやったわけ?」
イプラが真っ先に当然と言える疑義を差しはさむと、男たちもやおらザワつきだ
した。
対してdooは、それについては完全スルー。
「ワタシのドゥーはこう書くのぉ――」
イプラに向けてdooは宙にd、o、o、と指先で書き示す。
「doo?」
「そ~。じゃないと、意味がいろいろある語音だからぁ。このdoo自体にも、困
る意味があっちゃうし~」
「いやWizって、凄すぎるよdoo。聞いたことがある話よりずっと‥‥」
「ワタシが使う魔述は、タネも仕掛けもないのに、ほとんど何でもアリアリ~。だ
からWizを名乗っているんだけど、イプラが好きに思ってくれていいの」
「‥‥何でも? ほとんどだなんて‥‥」
「で~、ワタシたちが海を元どおりにしたってこと、しっかりバッチリわかってく
れたぁ?」
「‥‥まぁ、わかる気はするけど、なんとなく‥‥」
「海に入るのが怖くて嫌だったんでしょ? しばらくは、あのまま海の上が歩ける
ようになっているから、早いトコ捕りたいだけ捕って来ちゃって~」
「ホェ~、歩けるんだ? ん~でもねぇ‥‥」
「みんなの安全も、あの具足師が保障してくれるの。ワタシより物凄いチカラで、
何だろうと一閃で退治しちゃうから、みんな安心してバシャバシャ行く行くぅ」
そう今度はdooが嗾けても、男たちが従順に信じて、海へと歩きだしてくれる
道理などない。
よってdooの視線には刺刺しさが加わり、その一部始終を遠目から窺っていた
魁へと向けられ、鋭く射通すことになる──。
「ったく‥‥失敗ったのはdooだろがっ、こんなキテレツなことしちまって。一
体誰がハイッ、それでは早速、だなんて行くもんかよ」
履きなおしたバッシュの、ヒモを締め整えるフリもきりあげてブツやく魁に、d
ooは眉を顰めるだけでなく、咎め立てるように一段と眼勢も強めた。
「今何か言ったみたいだけど、そんなトコからじゃ、全っ然っ聞こえないの。ホラ
ホラァ、掩護してくれるんでしょ掩護~」
「‥‥ったく、どうしろってんだよ? そんなあからさまに言われたら、何を言っ
ても掩護になりゃしないってのっ」




