005-10
dooにいきなり指差され、イプラばかりか、男たちの視線をも一身に浴びた魁
は、ビクンと手を滑らせて、無様にバッシュでお手玉まで披露。
それで魁は一応、害意からない小者を、存分にアピールすることが叶う。
「ふ~ん、そうなわけ? 私たちの知らない遠い国から来たんだね‥‥」
「ウンウン、そんなカンジ~。それにもう大陸同士は離れて、海はいつもと変わら
ないわよぉ」
「そうなのっ? なんだよかったぁ――」イプラは表情を綻ばせて、周囲の男たち
へ目を配る――「聞いたかいみんな、もう異変は終わって、いつもどおりだそうだ
よっ。さぁ、キトキト仕事にかかって,、遅れをバッシャンととり戻すよ!」
足を止めたきり漁に向かうことも忘れて、dooを環視している男たちへ普段と
変わらぬ調子で檄を飛ばしたイプラだが、男たちのノりはまるで芳しくなく、「オ、
オゥ‥‥」と、へどもど応じたのは、イプラと最後に目が合った一人きり。
「何だよみんな? ここで契約を破っちまったら、今までの苦労が水の泡なんだよ
っ。鬼の頭にゃ、危ないとか怖いとかないんだから、行くしかないんだ」
「‥‥そうは言うけどなぁイプラ、あれだけの海がどこかへ行っちまったことは確
かなんだぞ、命あっての物種だろ?」
「聞いたでしょ? もう元に戻ってるんだとさ。気休めでもないよりマシ、さぁさ
ぁドッボンと行った行ったぁ、ここが男の見せどころだよっ」
「でもイプラ、船はまだ三割もできちゃいないんだしよ。バラして、もっと北の港
へ移った方がいいんじゃねぇか、やっぺし?」
一応桟橋まで一番近い、最もイプラから離れた位置に立つウミガメ男が異存を蒸
し返すと、ほかの男たちも一旦は度胸を据えて出て来た手前、頷きこそしないもの
の、無言で今一度イプラに思い留まるよう、懇願の目色を浮かべていた。
そんなムードに、黙っていられるわけもないdooは、「アラま、信じてくれち
ゃって全然大丈夫なのにぃ。だって海はワタシたちが戻したんだもん」とサラリ、
魁から断念を諭された言い逃れを口にしてしまう。
「まさかぁ、あんたが海を? ‥‥そりゃ、ホントなら嬉しいんだけどさ」
「ホントよ。ワタシWizだからぁ、チョチョイッとね~」
「‥‥Wiz? って、私と年の差がなさそうなのに‥‥マジガチで?」
「ではでは~、そこらのウィザードやウィッチよりもできるってトコを、チョット
証明して見せちゃいましょうかぁ」
dooのふけらかしは言い前に留まらず、両手を、前へ大きく振り伸ばしての指
揮者ポーズも全開で、イプラたちへと見せつけにかかる──。




