005-08
痴れ痴れと話を逸らし戻した魁への懸念ばかりか、逡巡すらもなく、dooは走
りだすというリアクションに出た──。
それに遅れをとらないよう、あたふたと追い駆けるしかない魁だが、近づくにつ
れ、人鯨族は、皮膚の色に近い灰色の褌を締めていたことがわかる。
彼らも、人亀族と同じく、丸めた網も脇に抱えていることから、この一団は漁師
で、これから渋渋漁へ出て行くところであり、渋渋となっている理由にも、当然魁
には見当がつく。
「アッ、向こうもワタシたちに気づいたわ。町の様子を聞いてみちゃうぅ?」
「なぁdoo、海がもう元に戻ったことを伝えれば、あの人たちとはまともに話が
できるのかな?」
人族の一人種となるだけあって、人鯨族も人亀族も二足歩行する人には違いない
ものの、ツヤツヤのイルカらしく、またウミガメの甲羅を着込ませた上でカメらし
く、巧みにボディーペインティングを施したようにしか見て取れない風体。
それらは、魁にしてみれば、ホブゴブリンやオーガに似寄っていて、額からツノ
が出ていようとも、鬼人の方が同族に思えてきてならない。
「少なくとも、命を狙う攻撃はされないでしょ。内地へ送るためのサカナを獲る漁
師さんたちなんだし」
「鬼って、自分たちじゃ獲らないのにサカナを喰うのかよ? まぁ獲るのがヘタそ
うって言うか、泳げなさそうだけどさ‥‥」
「アラッ、今出て来たの女子じゃない? 味方してもらえちゃうかも~」
しぶらこぶら先に桟橋へと出た男たちに、何やら威勢よく発破をかけだしている
のは、間違いなく、魁にも歳の近さを感じさせる女子だった。
ツルテカとした勝気そうな色白の美貌に、腰までの長いツヤツヤ黒髪は、イルカ
と言うよりもシャチ。
なので、魁はオルカ女子と認識するも、途端に足は止まってしまう──。
「どしたのっ、またしてもビビりが入っちゃったわけ~?」
走りを緩めてふり返るdooに、魁はできる限り自然を装っての抗弁に出る。
「まぁなっ。入ったのは、小石がバッシュにだ。出さないと足の裏が痛いんでオレ
にかわまず行ってくれ、掩護は絶対にするから心配すんな」
dooは軽く肩を竦めて応じると、快捷に向きなおり走る調子も一気に戻した。
──とりあえず、魁は、その場にしゃがみ込むという対応を反射的にとる。
オルカ女子は、ダイナマイトでは片づけられない、CLー20ボディーとでも称
すべき凄まじきグラマスぶり。
にもかかわらず、男たちと同じく褌を締め、胸には、はち切れんばかりにサラシ
を巻いたあられもない姿ながら、率先して仕事に臨む気満満といった佇まい。




