第二百二十八話
「俊。こちらを」
ユグドラシルはそう言って指輪を渡してくる。
「これは?」
「使う魔法の能力を向上させる効果と魔法の無効化の能力があります」
「僕は魔法が使えないのですが?」
「それは使い方を知らないからですね。俊。貴方は精霊と契約していなくても魔法が使えますよ」
「そうなんですか?」
「俊。魔法とは何かわかりますか?」
「いえ・・・。ただ、不思議な現象を引き起こすとしか・・・」
「魔法とは意思の力です。願ったことを叶えてくれる。使える場所に制限はありますけどね」
「制限ですか?」
「世界樹の影響力のある場所でしか使えません」
「それは何故なのでしょうか?」
「それは世界樹が願いを叶えようと力を貸すからです」
「なるほど・・・」
「普通のエルフでは精霊と契約を交わさなければ魔法を使えないのは世界樹にその願いを届けられないからです。ですが、ハイエルフは違います。直接、世界樹に願いを届けることが可能です」
「俊殿。よければ私が魔法の使い方をレクチャーしよう」
そう提案してくれたのはマーカスだった。
「お願いしてもいいですか?」
「お安い御用だ」
「俊。貴方にお願いしたいことがあるのです」
そう言ってユグドラシルは何やら樽のような物を複数、取り出す。
「それは?」
「世界樹の樹液です。この地を離れているハイエルフにこれを届けていただけませんか?」
「構いませんけど、どういった意味が?」
「ハイエルフにとって世界樹の樹液は最高の嗜好品なんですよ。この地に呼び戻すことはできませんが少しでも慰めになればと思いまして」
「なるほど・・・。では、お預かりしますけど地球以外にハイエルフの方がどこにいるかしらないのですが・・・」
「そこは大丈夫です。端末にデータを送りますので」
そう言ってユグドラシルは端末にデータを送ってくる。
俊が確認すると銀河帝国の支配宙域に何人かいるようだ。
だが、支配宙域以外にもいるようで尋ねるには苦労しそうだった。
「出来る限りのことはしますが全員に会えるかはわかりません」
俊は正直にそう告げた。
「それはわかっています。出来る限りでいいのですよ」
ユグドラシルはそう言って柔らかい笑みを浮かべる。
ユグドラシルにとってハイエルフはそれだけ大事な存在ということなのだろう。
「この子は貴方がここを発つまでには孵化するでしょう」
そう言って預けた卵をユグドラシルが優しく撫でている。
「僕もその子に会えるのが楽しみです」
「とってもいい子なので大切にしてあげてくださいね」
用事が終わったので俊とマーカスはユグドラシルの元を辞することにした。




