第二百十四話
俊の率いる艦隊が引いたことで電子攻撃も止んでいた。
だが、ここでヴァルハントは驚愕的な報告を聞くことになる。
「拠点が攻撃されているだと?」
「はい・・・。今から撤退しても奪還は難しいかと・・・」
襲っている相手が問題だった。
ヴィレッタは元々銀河帝国艦隊では名の知れた軍人だった。
その能力を買われてアルシェントの部下に大抜擢された過去がある。
アルシェントの部下になった後も活躍は目覚ましかった。
ヴァルハントは何度も勧誘したが尻尾を振ることはなく、追放するしかなかった。
追放された後も宇宙海賊として活躍するヴィレッタの話は流れてきていた。
「ぐぬぬ・・・。どこまでも私をコケにしをって・・・」
「残念ながら相手は歴戦の猛者です。引いても活路があるとは思えません」
「わかっている。このまま進軍し蹂躙して体制を立て直す」
参謀はわかっていた。
引くにしろ進むにしろ地獄であると。
ヴィレッタの能力はよくわかっている。
だが、俊の手腕も軽く見るなど出来なかった。
ここまで手玉に取られたのだ。
「ヴァルハント様。1つよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「この状況を全艦隊に通達しても?」
「ならぬ」
ヴァルハントは冷たくそう言い放つ。
「何故ですか?帰る場所がない以上、死力を尽くして戦うしかないと知れば士気も上がるでしょう」
「それでは、私が無能になってしまうではないか」
ヴァルハントはここまできても自分のことしか考えていなかった。
参謀は本気で仕える相手を間違えたと頭を抱えたい気分だった。
だが、同じ船に乗ってしまった以上は最善を尽くすしかない。
深呼吸して心を落ち着ける。
冷静さを欠けば本当に全滅するしかない。
だが、脳裏にはちらりと帝都で過ごしているであろう家族の顔がよぎった。
自分は大罪の片棒を担いでいる。
それが知れ渡れば今までのような生活はできなくなるだろう。
自分が死ぬかもしれないのはまだいい。
だが、家族まで巻き込んでしまった。
アルシェントは敵には厳しい部分がある。
その責が家族にまで及ぶかもしれない。
それは部下達の家族も同様だ。
いっそヴァルハントを差し出してまおうか。
そんなことを考えてしまう。
だが、それはそれで名誉ある銀河帝国の軍人として取れる手段ではなかった。
守るべき相手を差し出し生き残ったとして誰も自分達のことを信用しなくなるだろう。
自分達は栄光ある銀河帝国の軍人だ。
自分達は皇族に使える名誉ある銀河帝国の軍人なのだ。
先達の名誉を大きく傷つける愚行に走るわけにはいかない。
参謀は最後にもう一度深呼吸すると覚悟を決めた。




