第二百十三話
ヴァルハントの配下は即座に動いた。
左右に展開している艦隊には連絡艇を派遣する。
戦闘中に連絡艇を送るなど本来ならありえない。
だが、通信手段を欠いている現在、取れる手段は限られていた。
ヴァルハント艦隊の総旗艦であるヴァルハラは発光信号を発する。
古典的な手段ではある。
だが、その効果は劇的だった。
信号を受け取った艦もまた発光信号を発する。
それが連鎖し統率を何とか取り戻す。
現在、戦闘中の味方は時間を稼ぐ為に必死に抵抗をしている。
見捨てられたのはわかっているだろう。
だが、誇り高い銀河帝国艦隊の一員として彼等は自分のすべき仕事を完璧に遂行する。
彼等の犠牲を無駄にしない為に参謀は艦隊を再編する。
拠点を出発した時よりも少なくなった艦艇を見て自分の無能さが嫌になる。
多くの部下をみすみす死なせてしまった。
本来なら撤退すべき場面だが最高責任者ではるヴァルハントが受け入れない以上はどうにかして戦う必要がある。
残存戦力を中央に集め決戦を挑む以外の選択肢がなかった。
ヴァルハント側の動きに俊側の艦隊も気がついていた。
対応したいところではあるが、現在、戦火を交えている艦を放置するわけにもいかない。
それにこちら側は少ない戦力で戦っているのだ。
弾薬などのことを考えればここで引くべきだった。
「各艦に通達。拠点まで撤退する」
俊はすぐにそう命じる。
各艦から了解の返事が返ってくる。
俊はすぐに被害状況を確認する。
自走できる艦はこの時点で拠点まで撤退させている。
完全に破壊されてしまった艦は放棄するしかない。
あれだけ有利な状況であったというのに被害にあった艦が想定より多い。
それはヴァルハント側の軍人達の練度の高さを物語っていた。
「殿は任せてもらうわよん」
ドリトルがそう言って傭兵達と共に最後尾に陣取る。
追撃戦に備え艦の向きは敵に向けたままだ。
それでも撤退の速度にしっかりとついてくるところを見るとこういう展開にも慣れているのだろう。
ヴァルハント側の艦隊に動きはない。
追撃戦を仕掛ける余裕がないのだろう。
お互いに一休止といったところだ。
手札はまだ残してあるとはいえ、次の戦闘は激しいものになる。
電子攻撃は1度使った為、次の戦闘では解析されているはずだ。
電子攻撃のパターンはいくつかあるがそれでも初戦よりは通じにくくなると思っていた方が良い。
急増した要塞を活用しつつこちらの消耗をどれだけ抑えられるか。
それが勝負の分かれ目になるだろう。




