第二百十一話
エルフの艦隊は精霊の力を使いありえない速度で宇宙を駆ける。
迎撃の為にヴァルハントの艦隊が狙ってくるが全てを紙一重で躱していく。
紙一重で躱す理由は簡単だ。
突撃の勢いをできる限り生かすためだった。
「それにしても俊殿には感謝するしかないな」
エルフ艦隊の司令官は最新鋭艦である信濃の量産型を操りながらそうこぼす。
最新鋭艦を惜しげもなく託しこちらの希望は全て叶えてくれた。
これで結果を残せなければ一族の恥になる。
「皆の者。蹂躙せよ」
エルフ艦隊の司令官がそう命じるとそれに応えるように各艦が持てる火力を全て解放する。
その狙いは高速で動いているというのに正確であり、シールド艦も容易く射貫く。
一番苦戦すると思っていたシールド艦をやすやすと墜としエルフ艦隊はその勢いのままヴァルハントの右翼艦隊を食い荒らす。
相手からしたら災難でしかない。
数の少ない艦隊に一方的にやられるのだ。
だが、そんなことはエルフ艦隊には関係がなかった。
ここで出来る限り数を減らす。
数で負けている現状、それが最優先だった。
俊とヴァルハントの艦隊が衝突している頃、ヴァルハントの拠点でも動きがあった。
「未確認の艦隊がこちらに近づいてきます」
「ヴァルハント様に至急連絡を」
「駄目です。通信が繋がりません」
その理由は簡単だった。
電子戦艦であるメティスが電子戦をはじめていたからだ。
強力な電子攻撃に晒されたヴァルハントの艦隊は電子装備が使えなくなっていたのだ。
「ええい。こうなったら迎撃するしかない」
拠点の最高責任者はそう言って残っている守備兵力を全て投入する。
最低限の戦力しか残っていないがそれでもこの拠点は強固に作られている。
そう簡単に墜ちるはずがない。
「あれが、ヴァルハントの馬鹿が作った拠点か。中々厄介そうだね」
そう言葉をこぼすのは独立遊撃艦隊を率いるヴィレッタだった。
このタイミングで拠点を襲うのは偶然ではない。
アルシェントから非公式に依頼があったからだ。
独立遊撃艦隊はその性質上、皇帝からの命令さえ拒否する権限を持っている。
だが、ここで放置すれば銀河帝国を揺るがす事態にもなりかねない。
それに、かつては主として仰いだアルシェントからの依頼だ。
頼られるというのも悪い気がしなかった。
「さて・・・。時間はかかるだろうけど確実にいくよ」
ヴィレッタからすればこんなところで部下を失うような真似はしたくない。
長期戦に備えて色々準備してきた。
ヴィレッタの艦隊とヴァルハントの拠点、どちらが先に音をあげるか我慢比べのはじまりだった。




